PASSIONのレビュー・感想・評価

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4.5言葉選びのセンス

2022年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

濱口竜介監督の東京藝術大学時代の作品なのだが、この完成度で学生映画とはすごい。男女5人のすれ違いを描いた作品だが、それぞれの好意が向かう矢印がかみ合わないことによる、滑稽さ、切なさ、痛さが素晴らしく豊かに描かれている。煙突からモクモクと煙があがる朝に、男と女が歩いていく長回しカットの素晴らしさが目に焼き付いて離れない。
濱口映画は、会話劇だ。この映画も軽妙なテンポで会話が進んでいく。質問して本音を答えた人が次の質問ができるルールの遊びのシーンの緊張感と可笑しさが同居したあの感じを作れるのは本当にすごい才能だと思う。
役者陣は、その後の濱口映画の常連となった者たちが多数出ている。みんな良い顔をしているし、いい声をしている。役者の肉体と音に対する濱口監督の鋭敏なセンスがすでに見えている。
映画における会話の自然さとはなんだろうと、考えながら見ていた。自然な日常会話そのままで、映画として自然な会話になるわけではないんだなと、この映画を見て思った。

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杉本穂高

4.5現実とは違う言葉遊び、でもなんかリアル。

2022年6月5日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

言葉のセンス、会話劇のレビューに納得。
藝大時代の作品にして、このクオリティ。

直前にテンポの悪い作品を観たばかりだったので、尚更テンポの軽妙さに驚いてしまいました。

劇中は言葉のラッシュで、誰も話していない時間の方が少ないくらいだったように思います。それなのに、なんでしょう、この入ってくる言葉。しかも、こちらの理解が追いつくギリギリのテンポで、適度に予測を裏切られながら進んでいくような。共感とかは置いといて、ただ圧倒されました。

確か、ヒット曲も『予測の裏切り』があると聞いたことがあるんですが、誰が言ってたんだったかな…
耳馴染みの良さに加え、適度に外されると中毒性に変わる感じ。

唐突なシーン展開も、なんだか成立している。
演者はどれだけ言葉を落とし込んだんでしょうか。
このシーン何回撮ったんでしょうか。
なんでしょうこの生々しい感じ。

まるで小説を読んでるような気持ちになったのですが、濱口監督、東大文学部出身なのですね。

製作側と観客目線のギャップを埋めるのってとても難しいことだと思うんです。制作側はある意味ネタバレしているわけで。それを観客に向けてどういう順に、どう見せていくって、どうやって組み立てていくんでしょうか?自分はその辺、ほんとに不得意なんで、映画にしろ、小説にしろ、漫画にしろ、物語を製作する人たち、尊敬しかありません。

このリアリティを出すためのメイキング、見てみたくなりました。

言葉だけでなく、印象的な映像もたくさん。

占部房子さんとマンションの感じ、ウォン・カーウァイ作品の雰囲気を思い出しました。
バスのシーン、工場萌えシーン、よき。

今回の濱口監督特集で、『ハッピーアワー』の監督であることを知りました。公開当時、イメージフォーラムで散々悩んで、観られなかった作品(300分超えの時間が取れず)。

いろいろ観てみたくなりました。

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osinco

4.0悔しい

2022年5月5日
iPhoneアプリから投稿

濱口監督作品を観た後は
いつも悔しくて腹が立つ

いきりたって映画館をでる
嫉妬の化身となっている

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JYARI

4.0会話劇

2022年4月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

日本語の会話劇は楽しい。
ここまで愛情の矢印が一致しないのも面白い。

登場人物の心情に寄り添うことはできなかったが、演技というより皆自然体だなぁと思った。

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いたかわ

3.0乗り物内の会話劇から掬い取るもの。

2022年3月2日
iPhoneアプリから投稿

初見。
会話成立の不全でこそ僅かだが確かに成立するかの相互理解を掬い取る。
その為に関係性のスリルを追いリアリティは度外視する濱口竜介。
こんな奴らいないだろ。
受賞の近作の題にもなる乗り物内での会話に拘る撮り癖も。
ただ面白くはないから好きでない。
価値はありそう。

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きねまっきい

4.0二十代ってこんなに子供だったのかぁ

2020年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

友人同士の誕生会で結婚を報告したカップル、妻が妊娠中の男、一人フラフラしている男が彼女の家に行こう、と言い出す。
その後は子供じみたおままごと状態が続く。
本人たちは一生懸命らしいので、なお痛々しい。

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いやよセブン

4.0恐るべき会話劇

2018年9月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

特集上映「濱口竜介アーリー・ワークス」にて。
人間関係とは儘ならぬものであり生きているって実は薄氷を踏むことのようだ、という感覚。
下手を踏むとただの頭でっかちな会話劇になりうると思うのだが、会話の質感がリアルすぎる。リアリティを演出で追求している、というより役者が完全にこの役に生きてしまったというか、そういう類の迫りくるリアルがあった。
居心地は常に悪いけど若さでは走れなくて、でも大人の方が時折突拍子もないことをする。若さと大人になることへのアンバランスを見た気がした。
感想としては、本当に私この映画に出てくる男の人たちがわからない。他人事だからか。占部房子は死ぬほどわかる。河井青葉は一周回ってよくわかんない。多分あれは自分もよくわかってない何かにしばられているんだな。

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andhyphen

5.0真実の水、と映画

2016年12月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

スリリングで濃密なこの台詞劇には、「ハッピーアワー」で驚かされた、えもいわれぬ感動が、突然変異でなく映画そのものの身振りのテーマであったのに震えざるを得ません。
制作東京芸大の自主映画と思いきや、完璧に良い意味で裏切られました。台詞の緊迫感は映画そのものでした。<真実の水>の三人での会話、工場の巨大な煙突の元での男女の会話は忘れがたいシーンです。
この後の濱口竜介の元町映画館での過去作品が楽しみです。
蛇足
映画での台詞の時間と観客の私の時空間とのシンクロは、何なんでしょうか?

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太陽傅