劇場公開日 2014年4月19日

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「心の無い者の心」映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん くんぞうさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0心の無い者の心

2014年12月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

笑える

楽しい

近年に入って、父親という存在が妙に軽いイメージがついている。昔の父親ってのは怖くて威厳があって、子供は下手に言い訳や喧嘩なんて出来ないけど、いざというときは家族を命がけで守ってくれる。そんな強くてかっこいい父親がたくさん居た。それに比べて今の父親ときたら…というイメージ。
今作は、そういう昔の父親という者をあまりリスペクトしていないというか、そういう存在がいない世界で起こる話である。威厳ある、一家の大黒柱たる父親像を否定しているようにも捉えられる。それはラスボスに当たる存在が物語っている。家族の愛に飢えていたという以外の動機がないというのが問題であると思う。そこの折り合いはうまくつけて欲しかった。ただ威張り腐ってる時代遅れの産物というだけではないと思うのだが。
だが今作の魅力はそういう部分だけではない。シビアな問題定義を割と真剣に描こうとしている感じは伝わる。なので上で書いたものも、そこまで不快には思わない作りになっている。その要因が、今作のテーマ、メッセージが、「父親とはなにか」「男とはなにか」「絆とはなにか」というキーワードを現代の視点に置いて語っているからである。
なので素直に感情移入できるし、素直に親父かっこ悪いけどかっけえ!と思えるのだ。
嫁の尻に敷かれて、子供には自慢されず、腰を痛めて公園で暇を潰してたって、家族に対する愛は、優しさは「昔」の父親が持っていた、とされた頃とは何一つ変わっていない。
それが人の形を失っても、どんなことがあっても、家族を愛する。家族もその愛に賢明に答える。しんちゃんが首だけになったロボ父ちゃんの首を抱えて歩く、後ろ姿のカットなんて最高だった。今作は親父最高!男最高!という言わば親父賛歌なのだ。
ウェットになり切らないところでギャグを挟み込んだりとバランスもいい。だが泣かすところはしっかりと泣かす。ラストのある展開には涙をこらえるのが辛かった程だ。
細かいことを考えずとも、とても楽しめた。

くんぞう