沈黙(1963)のレビュー・感想・評価

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3.0映画の力を見せつける一本

2014年12月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

 主人公の少年はよくしゃべるので、途中までこの「沈黙」というタイトルの意味が分からなかった。この少年が街の人々から非難される原因となった事件の当事者であるにもかかわらず、重要な人物が最後まで真相を口にすることはないのだ。
 その沈黙の理由は宗教上の理由だったりするのだが、このこと自体はさほど映画の中で大きな意味を持っていないのではないかと思う。以下述べることを考えると、やはり鑑賞後には、なぜこの沈黙をタイトルにしたのかが、また分からなくなるのだ。

 主人公の少年は事故で視力を失うが、その前に司教を脅したという事件によって、町の人々から同情を得られないばかりか、あからさまな無視や軽蔑といった扱いを受ける。
 少年が治療中に着けていた眼帯は、瞳の部分を金属のメッシュで押さえられている。視力を失った現実を受け入れることへの恐怖から、眼帯を外すことを拒むのだが、蜂や蠅の複眼を思わせるこのプロテクターのようなものが彼の恐怖心を象徴する。
 そして、ホームレスの男にも「虫みたいな眼」と蔑まされるのだが、少年はその自分自身の姿を見ることができない。この惨めで孤独な様相を、小道具一つで具体的に表象している。こうした表現が映画以外のどのような手段で可能だろうか。
 観ていて辛くなる内容の作品である。ものごとの一面だけで人を判断して、差別したり蔑む愚かさではなく、その蔑みの対象となる人間の内面を映像化することに成功している。まさに映画の力を見せつける一本。

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佐分 利信