劇場公開日 2015年6月6日

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トゥモローランド : 映画評論・批評

2015年6月2日更新

2015年6月6日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

「わからない」の可能性を信じる。ディズニー映画の未来形

ディズニーランドがおとぎ話の世界を再現して来場客に体験させる場であることを考慮すると、同施設の人気エリアをモチーフにしたSF映画で現実世界と未来的パラレルワールドを行き来するストーリーを語ることは、子供や若者向けの見せ物としてごく真っ当な印象を受ける。実際、序盤から中盤にかけて、発明好きの少年、行動派のギーク女子高生、2人を導く謎の美少女(キュートなそばかすっ娘のラフィー・キャシディ)による冒険譚の体で快調に進む。

だが、作品の世界観が明らかになるにつれ、むしろジョージ・クルーニーが演じる夢をこじらせた大人の世代のほうが、この仕掛けやメッセージを自然に受け止められる中心層ではないかという思いが強まる。努力が実らず挫折するくやしさ。警告が届かないもどかしさ。居場所がなくなる絶望感。大人が往々にして味わうこうした感情を理解できるからこそ、破滅に突き進む世界を救うべく若い娘たちと共闘する中年ヒーローの姿に熱くなるのだ。

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ピクサーの長編アニメで2度のアカデミー賞長編アニメーション賞を受賞し、初の実写映画「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」でも大成功したブラッド・バード監督が、「LOST」のデイモン・リンデロフとの共同脚本で紡ぐ活劇は、確かにスリル満点でアトラクションのように楽しいが、パラレルワールドをめぐるさまざまな疑問については説明されないままのものも多く、SF的興味を十分に満足させてくれるとは言いがたい。

また、メディアによる情報の洪水が人々を洗脳するとして否定的に語られる場面があるが、巨大メディア企業ディズニーの作品でこの主張は意外だった。とはいえ、そんな自己批判すれすれのネタを仕込んでいることからも、わかりやすさを重視したお子様映画を目指していないことは明らかだし、むしろ謎や疑問を残しておくのが戦略のような気がしてくる。

明日はわからないから、夢を見ることができる。センス・オブ・ワンダーを契機に、仕組みや法則をわかろうと努力し、得たことを土台により素晴らしいものを創造する。製作陣はきっと、本作を観た少年少女の心に芽生える「わからない」が、いつか形を変えて花開くことを信じているはず。未来を見据えるディズニーの進化がここにある。

高森郁哉

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