劇場公開日 2014年2月22日

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「銀河鉄道の島」ジョバンニの島 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0銀河鉄道の島

2014年8月7日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

今年を代表するアニメ映画を現時点で独断と偏見で選ぶとしたら、「たまこラブストーリー」がダントツの1位、「アナと雪の女王」「思い出のマーニー」がそれに続き、そしてもう一本挙げるとしたら、是非とも本作を推したい。

今尚問題続く北方領土を舞台に、終戦後、ソ連軍に占拠された色丹島で起きた家族の実話を描いた秀作アニメーション。

元となった小説があるそうだが、アニメーションで映像化して正解かもしれない。
と言うのも、話が重く、暗い。実写化だったら、相当な鬱映画。かの「火垂るの墓」が頭をよぎった。
心温まるアニメと勘違いして見ると、ズシリとくる。

ソ連軍の占拠により、島の生活は一変。
家や持ち物は没収。
主人公の幼い兄弟は父が逮捕。
やがて島民たちは島を強制的に出る事に。
その先でも困難の連続。
兄弟にも悲しい出来事が待ち受けていた…。

確かにシリアスな内容だが、かと言って、全編通してそうではない。そこはアニメーション、感動やハートフルな要素も織り込まれている。

まず画のタッチが、以前見た「虹色ほたる 永遠の夏休み」のような何処か懐かしく、温かい。
また、兄弟は「銀河鉄道の夜」を愛読しており、これが感動の大きなポイントにもなっている。兄弟が空想の中で銀河鉄道に乗るシーンは、幻想的で美しい。

家族愛、兄弟の絆も作品の軸。
逮捕された父と久し振りに対面するシーンは涙なしには見られない。○○○弟との○○のシーンは号泣必至。

作品の一服の清涼剤となっているのが、ソ連将校の娘ターニャとの淡い初恋。
このターニャが「マーニー」のような美少女で、兄弟にとっても忘れられない存在。
しかし、ターニャとはしこりの残る別れが…。

監督は西久保瑞穂、脚本は杉田成道、音楽はさだまさし…ベテラン揃い。
声の出演も、市村正親、仲間由紀恵、ユースケ・サンタマリア、八千草薫、仲代達矢と豪華な面々。上手下手の差はあるが、兄弟の祖父の声を担当した北島三郎は本人と気付かないほどの上手さ!

北方領土問題など、所詮は国と国の睨み合い。
現に子供たちは、異国同士ながらも交流を深める。
その交流が引き裂かれてしまった。
島民たちは島を出て長い歳月が経ってしまった。
彼らの故郷も思い出も、確かにあの島にある。

本作はモスクワの映画祭にも出品された。
見れば納得。北方領土問題をあざとく突いただけの映画ではない事を。

近大