劇場公開日 2013年11月9日

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ルームメイト : インタビュー

2013年11月5日更新
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北川景子「大好きな映画」へのあふれる思いを告白

女優・北川景子にとって2013年は映画と共に過ごした、目まぐるしい1年となった。今年は「謎解きはディナーのあとで」「ルームメイト」、来年は「ジャッジ!」「抱きしめたい」「悪夢ちゃん The 夢ovie」が立て続けに公開。しかも、ほとんどが主演だ。多忙な1年を振り返り「時間は作るものって思ってはいるんです。でも、今年はプライベートな時間はなかったですね」と言葉をこぼすが、表情は満たされているからこそにじみ出てくるやわらかな笑顔。しかし、今年の締めくくりとなる主演作『ルームメイト』では、その笑顔からは想像もつかない別の顔をのぞかせる。北川の新しい挑戦が今作には詰まっている。(取材・文/新谷里映)

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「基本的にお仕事が好きで、いただいたものはできるだけやりたいと思っているんです。ただ、ここ2年くらいはドラマ「謎解きはディナーのあとで」のシリーズ化と映画化があって、映画の仕事は好きだけれど、なかなかお仕事を入れることができなかった。なので一段落したタイミングで、きっとできるはず! って、お話をいただいた映画の仕事をすべて引き受けたんです(笑)」

なかでも「ルームメイト」は、「どんなスケジュールでも引き受けたい作品だった。断る理由が見つからなかった」というほど強く興味を抱いたそう。興味の対象となったのは深層心理の恐さ。北川の演じる主人公・春海がルームメイトの麗子(深田恭子)の存在に恐怖心とさい疑心を持ち、ある事実が明らかになっていくというホラーとサスペンスの要素を取り入れた人間ドラマ。「これまでやったことがなかった」からこそ、なおさら興味は膨らんだと語る。

「台本を読む前、企画の段階でやりたい!って思ったんです。映画だとコメディとか恋愛ものが多かったので、少し重みのある映画をやってみたいと思っていた時期でもあって。あと、もともと心理学に興味があったので、ホラーと言ってもゾンビとかお化けとかが出てくるわけではない深層心理の恐さにも惹かれました。台本もすごく面白くて、最初は自分が演じるというよりもひとつの読みものとしてなんて面白いんだろう! って読んでいたんです。撮影初日が近づくに連れて春海役の難しさに気づきましたけどね(笑)」

古澤監督から事前に伝えられたのは「春海はストーリーテラーであること」。観客が恐怖に浸れるかどうかは、春海が恐怖をどう受け取りリアクションするかにかかっている。受け身の芝居の経験はあまりなかった北川だが、だからこそ、これまでに培ってきた経験をフルに生かせる役となった。深田の演じる麗子とマリの演技を受けて生み出される北川の春海の芝居に、観客はあっと驚き、ゾクッとさせられる。特に物語の後半、廃墟と化したクラブ・アリアドネの場面では「ソファの下でのあのシーンでは、監督から『北川さん、ものすごく“悪い”顔していましたね』って言われたんです」と、数多くのホラー映画を手掛けてきた古澤監督を喜ばせる、素晴らしい演技を披露している。

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北川にとって「ルームメイト」の撮影現場は挑戦の場。「人のリアクションは自分が思い描いていた通りにはならなくて、だからどんなときも柔軟に動けるようにいる、それが大事だということに気づかされました」と思い返し、挑戦でありつつも「本当に楽しかった」とあふれる思いを言葉にする。

「カメラが寄っているとき引いているときによってお芝居を変えること、サイズ感を把握してお芝居することを最近覚えたんです。『ルームメイト』の現場でもカメラマンの浜田毅さんにカメラアングルを聞きながら演じていました。古澤監督もカメラの動きを細かく説明してくれたので、すごく演じやすくて、しかも楽しくて! 改めて映画の現場の楽しさを実感しました。映画もドラマもそれぞれに良さがあるけれど、クランクインする前に1冊の台本が手元にあって、すべてのシーンにおいて準備ができるのは映画ならでは。もちろん、相手の役者さんのお芝居によって現場で演技は変わっていくけれど、1冊の台本をもとに美術さんや衣裳さん、スタッフみんなが準備をするように役者も演技プランを立ていく。それが楽しくて仕方ないんです」

楽しい、好き、嬉しい──誰もが日々感じるごくふつうの感情ではあるけれど、北川が発するそれらの言葉が特別なものとして伝わってくるのは、本当に映画が好きで、仕事が楽しくて、そこから得られることに嬉しさを感じているから。そして「体力的にちょっときつかったなあと思うときはあったけれど、それでもすべて引き受けて良かったと思う」と言い切り、自分の原点に立ち返る。

「女優デビューしたばかりの頃、特撮の仕事がスタートだったんですが、その後、しばらく仕事が決まらなかったときがあったんです。仕事がないってこんなにもつらいんだって思った。その時の不安な気持ちを知っているから、声をかけてもらったものはできるだけ引き受けたいんです。大好きな映画はなおさら。映画は朽ち果てることがないというか、ずっと受け継がれていく感じがするんです。だから、映画に出て、たくさん作品を残すことができて、本当に嬉しい」。求められ続ける女優となった北川のそのすごさは「ルームメイト」にも確かに刻まれている。

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