風が踊る

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風が踊る

解説

台湾の名匠ホウ・シャオシエンの監督第2作。80年代初頭の台湾を舞台に、女性カメラマンと事故で視力を失った青年の心温まる恋を描いた青春ラブストーリー。台北を離れ、香港に住む恋人のもとへ旅立とうとしている女性カメラマンのシンホイ。ある日、彼女は事故で失明したチンタイという青年に出会い、彼の素朴な人柄に惹かれてゆく。やがて角膜の移植手術を受けたチンタイは視力を取り戻し、初めてシンホイの顔を見ることになるが……。主演は台湾のアイドル歌手フォン・フェイフェイと香港のスター歌手ケニー・ビー。2021年4月、特集上映「台湾巨匠傑作選2021 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督デビュー40周年記念<ホウ・シャオシェン大特集>」にて、デジタルリマスター版で公開。

1981年製作/92分/台湾
原題:Cheerful Wind
配給:オリオフィルムズ
劇場公開日:2021年4月17日

その他の公開日:1998年2月14日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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映画レビュー

4.0タイトル通りの躍動感に満ちたラブストーリー

2021年4月29日
PCから投稿

台湾の巨匠ホウ・シャオシェンが80年代に手掛けた監督第二作。歌謡曲の同じサビのフレーズがこれでもかと言うほどリフレインされる中、とにかく主人公をはじめあらゆる人々がその場に留まることなく、たえずエネルギッシュに動き回る。人間だけではない。ここでは大規模な都市開発の渦中にある台北の街並みや、車の往来、人と人との関係性に至るまで、あらゆるものが更新されていく。さらには、冒頭、海辺で遊ぶ子供たちの純朴な姿が映し出されたかと思えば、次の瞬間には視点が切り替わり、それを活写する撮影スタッフや見物客の姿。こうした二重構造によって見え方をガラリと変えてくる手法は、一つの何気ないアイディアとはいえ、まさにタイトル通りの躍動的な風を心の細部に吹き込ませる。もしもこれを昔のままの画質で観ても大した感動には至らなかったろう。デジタルリマスター版ならではの恩恵。40年を隔てて届いたこの贈り物を大切に受け止めたい。

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牛津厚信

4.0印象的な出会い描く導入部の鮮やかさ。「冬冬の夏休み」につながる要素も認められる侯孝賢監督第2作

2021年4月16日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

幸せ

CM撮影のため映像班と共に島を訪れていた女性写真家のシンホエは、ハーモニカで憂いを帯びた旋律を奏でる青年に目を留め、何度もシャッターを切る。この青年チンタイはある事情を抱えているが、それを知らないシンホエは彼の視線が自分に向いていると思い意識してしまう。やがてその事情を知らされたシンホエ(と観客)は「そういうことか!」と合点がいく。

実は撮影班の監督ローザイはシンホエの恋人でもあるのだが、淡くもどかしい三角関係が始まる予感を、この導入部は鮮やかに描き出している。幸運にも予備知識なしで鑑賞できた人は導入部のサプライズを新鮮に受け止められるが、残念ながらチンタイの“事情”は当サイトなどの作品解説や予告編の中で明示されているので、あらかじめ知ってから観ると驚きも半減してしまうだろう。作品の紹介や宣伝で筋をどこまで明かすのかは、常に悩ましい問題だ。

侯孝賢監督がデビュー作「ステキな彼女」に続き1981年に撮ったアイドル映画(主要キャスト3人は台湾と香港の人気歌手)。現代の感覚からすると恋愛模様がずいぶんのんびりしていて曖昧にも思われるが、その分爽やかで微笑ましくもある。子供たちの遊びやいたずらといった日常が活写されている点は、初期代表作「冬冬の夏休み」(84年)につながる要素だ。街並みや住居の作りなどに日本統治時代の名残りがある点も、この頃の台湾映画に日本の観客が郷愁をそそられる一因になっている。

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高森 郁哉