無法松の一生(1943)

劇場公開日:

解説

阪東妻三郎の現代劇主演代表作。大映創立70周年記念特集上映「映画は大映」の一作品として、2012年11月23日より角川シネマ有楽町他にて上映された。

1943年製作/82分/日本
劇場公開日:1943年10月28日

ストーリー

松五郎こと無法松(阪東妻三郎)はトラブルを引き起こす暴れ者だが、どこか憎めない人力車夫。ある日竹馬から落ちた少年・敏雄(沢村アキオ)を助けたことがきっかけで陸軍大尉の吉岡家へ出入りするようになるが……。

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映画レビュー

4.5坂妻が素晴らしい松五郎にみる日本人像の美しさと儚さ、詩情豊かな稲垣演出と宮川一夫の映像美

2023年9月22日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、TV地上波、VOD

愛すべき日本映画。子供表現の上手な稲垣浩監督がその真価を示す。スローモーションを多用した撮影が印象的で美しく、その詩的な表現が素晴らしい。久しぶりに邦画を観たと言う満足感に浸る。主演坂東妻三郎の名演。
(1977年 5月26日 地上波テレビ)

洋画の華やかさと面白さの虜になっていた10代の頃は、正直なところ地味で暗い邦画を馬鹿にしていた。今に思えば日本と日本文化について無知だった故の偏見と、西洋文化への憧れの反動だったが、映画評論家淀川長治氏を一方的に信奉していたことも大きい。氏の邦画に対する要求は厳しかった。また映画館のない辺鄙な地方の高校生では、運よくテレビで放映されるのを受動的に鑑賞するしかなかったし、洋画と比べて限られていた。それでも数は少ないが、洋画の感動に並ぶ名作に出会えた。浦山桐郎の「キューポラのある街」、市川崑の「ビルマの竪琴」、小林正樹の「切腹」、小津安二郎の「秋刀魚の味」、田坂具隆の「女中っ子」、木下惠介の「カルメン故郷に帰る」、黒澤明の「七人の侍」、吉村公三郎の「夜の河」、溝口健二の「赤線地帯」、そして邦画ならではの味わいでは、川島雄三の「幕末太陽伝」、新藤兼人の「鬼婆」、久松静児の「警察日記」、内田吐夢の「浪花の恋の物語」、衣笠貞之助の「お琴と佐助」、三隅研次の「剣鬼」、増村保造の「陸軍中野学校」などがある。それらの中で、この稲垣浩監督の「無法松の一生」には特別な感慨を持った。それは、主人公富島松五郎の人間像に最も日本人の美しさと儚さを感じたからだった。またその松五郎を演じた坂東妻三郎の素晴らしに感服し、魅了される。この主人公の無骨さと一途さが映像の瑞々しさと融合して映画の詩となり、日本映画独特の映像美に昇華されていた。

初見から46年振りに見直して、この稲垣監督の演出、伊丹万作の脚本、妻三郎の演技と吉岡よし子役の園井恵子の美しさ、そして撮影の宮川一夫の技巧を凝らした映像美に改めて感動する。太平洋戦争真っ只中の製作環境の厳しさと内務省の検閲という時代の不運に晒され、作品としては不完全な状態でしか観ることが出来ない。重要な場面含め10分以上のカットを余儀なくされたとあるが、更に戦後GHQの検閲で約8分のフィルムが消失してしまい、本編の99分が78分まで短くなっている。しかし、ラストの多重露光の回想場面のモンタージュの素晴らしさが、ストーリーの流れを失わず何とか繋げていることは、本当に救いである。撮影監督8年のキャリアでめぐり会えた巨匠宮川一夫氏の代表作の一本としても、日本映画の貴重な作品であることは間違いない。

コメントする 3件)
共感した! 7件)
Gustav

5.01943年版を観ずして「無法松の一生」は語れません

2023年4月26日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

1943年公開
もともとは1938年の小説が原作

主演は阪東妻三郎
もちろん白黒作品
しかし撮影はあの宮沢一夫が撮っただけにあ素晴らしい映画的快感がある映像が詰まっています
彼が大映京都撮影所に移って最初の作品だけに気合いが入っていたのかも知れません
冒頭の人力車を見上る構図で消失点に走り去る映像でいきなりやられてしまいます
稲垣浩監督とは日活京都時代から何作も撮ってきているコンビですから息のあった撮影です

稲垣浩監督の演出もテンポよく、まどろむことはまったくありません

まさしく日本映画のオールタイムベストの上位を占めて当然の作品です
絶対に観ておくべき作品です

それなのに、なぜなのか21世紀になっても未だに本作の1943年版の鑑賞は大変困難なのです

リメイクは3回
1958年版
稲垣浩監督のセルフリメイク
主演、三船敏郎

1963年版
監督、村山新治
主演、三國連太郎

1965年版
監督、三隅研次
主演、勝新太郎

テレビドラマでも4度、舞台は数知れず
宝塚でも上演されたそうですから恐れいります

つまり本作がそれほどの素晴らしい作品であるという証明です

なのになぜ稲垣浩監督が1958年版のセルフリメイクを撮ったのでしょうか?

それは1943年版が戦中は当局によって、戦後は占領軍によって2度も検閲をうけカットされたからです
その悔しさが監督に完全版をカラーで撮り直したいと思わせたのでしょう

しかしハッキリいって1943年版がベストです
今日鑑賞できる1943年版が検閲後のものなのかも知れませんが、21世紀の私たちには一体どこが問題になったのかサッパリ分かりません

1958年版と比較して推測するならば問題になったのは、戦中の軍部からは陸軍大尉未亡人との淡い思慕のシーン
占領軍から問題視されたのは、日露戦争の祝勝会、第一次大戦での青島占領祝賀の提灯行列のシーンが問題とされたのだと思います

それらが自分の観た1943年版と1958年版との大きな違いだからです

しかしそれがどうしてもなくてはならないシーンかというとそうでもないと思います
恐らく二度の検閲後のものであろう1943年版でも十分に感動できるし、1958年よりも大いに勝るからです

細かい演出の冴えも、何もかも1943年版が上回っています
大スター三船敏郎であっても、本作の坂東妻三郎の無法松の方が遥かに役にはまっています
第一、クライマックスの祇園太鼓のシーンの盛り上がりは1958年版は不発していて、1943年版とは比べものになりません

つまり1943年版を観ずして「無法松の一生」は語れないというのが結論です

蛇足
「無法松の一生」は村田英雄とかの歌謡ショーでも大人気の演目です
特に彼の大ヒット曲「無法松の一生(度胸千両入り)」は超有名で、無数の演歌歌手にカバーされています

♪小倉生まれで 玄海育ち
口も荒いが 気も荒い~

21世紀生まれでも、あ!知ってる!という人がいるほどの有名曲です
この曲は1958年7月発売ですが、1958年版の映画の主題歌でもなく、同年4月公開の映画に触発されて別に発売された楽曲のようです
当初は大してヒットもしなかったのですが、4年後の1961年に彼の最大のヒット曲「王将」が出ると、それに引き摺られてこの曲まで1962年にヒットしたということだそうです

恐らく1963年版、1965年版の映画やその他のリメイク作品などは、みんなこの曲の大ヒットによるものだと思います

でもすべての始まりはこの1943年版だと思います

本作を観たあと是非お聴きください
YouTubeで簡単に聴けます
本作を観た感激があらたになります

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共感した! 4件)
あき240

3.0純真、純情、一途な男気の暴れ打ち❗

2023年4月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
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kazz

4.0キップの良い男だけ残った名作

2023年3月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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