風立ちぬのレビュー・感想・評価
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少年の夢
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少年時代から航空機の設計技師になりたかった主人公が、
見事にその世界のエリートとして日本初の飛行機を開発する。
でもその技術は零戦に使われる悲しき運命。
あと嫁も結核で早くなくしてしまう。
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少年時代の純真な主人公が夢をかなえる物語。
でももうちょい嫁のことを大事にして上げなさいよ。
と言っても今と時代背景が違うから、行動に違和感を感じるだけで、
彼は彼なりに妻を愛しているというのは伝わったからいいか。
宮崎駿監督からの激励
結論として、面白かったし、テーマ性も良かった。テーマ性というが宮崎駿の言いたい事は、作品を見る『日本の少年』達に対して二郎のようにいろんな障害に揉まれながらも藻掻いて自分の目的に向かって邁進していけという激励かと思う。
夢という象徴を多様した作品なので、物語は実際の日本の出来事ではあるが夢の描写が視覚的なファンタジー要素となっており、子供でも楽しめる内容だと思う。全体的に宮崎駿の趣味が全開となっている感じがしたし、堀越二郎 = 宮崎駿のようにも感じた。
戦争の泥臭さとは隔絶された場所での彼の格闘は、勝ちにつながらなかったが二郎を中心に『ゼロ』の結実に向けて前進し目的を達成したという意味で価値があると思う。また、里見菜穂子のポジションは堀越二郎の頑張りになくてはならなかったものだと思う。個人的には、最後の描写も含めてグレンラガンというアニメ作品における登場人物でヒロインであるニアが思い浮かんだ。
今作を見てあらためて主人公に目的意識があり、その障害と格闘してあがいていく作品は面白いと学んだ。
最近ジブリ映画は観なくなっていたのだが、庵野秀明が声優をやっている...
最近ジブリ映画は観なくなっていたのだが、庵野秀明が声優をやっているというのを今更ながらに知り、金曜ロードショーで視聴。前知識はその程度しかなく、視聴が終わった後に調べて零戦を設計した堀越二郎をモチーフにした作品であると知りました。個人的に時代がどんどん流れて行くのが非常に良かったです。一つの場面の長さが少なく、飽きが来る前に次のシーンへと移り変わります。
二郎は菜穂子に出会うまで仕事一直線という感じであり、出会ってからも仕事がメインという感じでまさに仕事人間という感じです。菜穂子が療養所に行ってしまっても追い掛ける様子もないため、結婚するために家まで行ってたのに理解出来ないと思った人も多いのではないでしょうか。しかし二郎は菜穂子の意図を汲み取り、仕事を続けることを選びます。
仕事をしたことが無い子供はもちろん、おそらくものづくりの仕事に一切携わったことがない人は面白くないと思うのでは?と偏見ながら思ってしまいます。私自身は文系ですが、二郎が飛行にのめり込むことが非常に納得出来ます。それほど二郎の環境は恵まれており、理解のある上司、ライバルというよりも共に高め合う同僚、応援してくれる菜穂子。仕事に邁進し、夢を追い、技術を高める環境が整っています。
近代化して行く日本が太平洋戦争を経て焼け野原になる。その一端を担った二郎は自責の念に囚われるということがありません。薄情だとか罪悪感が無いのかと怒る人もいるかも知れませんが、零戦が出来ようが出来なかろうが戦争は起こったでしょうし、そこにいちいち罪悪感を持つなんてのもおかしな話です。
人を選びますが先述した通り、ものづくりの経験がある人には非常に楽しめる作品だと思います。最初は酷い棒読みだと思った庵野秀明の声優も段々癖になって来ます。感情移入させない為に庵野を起用したそうですが、後半ちょっと上手くなってるのもいい塩梅です。恋愛映画だと思って観るとなんじゃこりゃ?と思うことは間違いないです。
「日傘の女」をコードに風立ちぬを読む
菜穂子が、丘の上にパラソルを立てて、スカートを揺らめかせて、絵を描いている場面をみて、モネの「日傘の女たち」を思い起こした。モネの妻のカミーユが若くして病気で死んだように、菜穂子も死んでしまうということが暗示されているように思う。
二郎は美しいものが好きで、その最たるものが飛行機である。きっと二郎は飛行機の次に菜穂子が、美しいから、好き。二郎は美しいものにしか興味がない。たとえば、美しくない妹との約束はいつも忘れる(美しくないから興味がない)だからこそ、妹にも「にいにいは薄情者です」と言われてしまう。
モネも妻のカミーユが死んだ時、「深く愛した彼女を記憶しようとする前に、彼女の変化する顔の色彩に強く反応していたのだ」という言葉を遺し、彼女の死顔を「死の床のカミーユ・モネ」という絵に残した。妻への愛情より、色彩のうつろいゆく変化の方に惹かれてしまうのである。
二郎とモネという天才に共通する、薄情さ、というか、天才すぎるゆえに人間らしさが抜け落ちてしまっている部分が伺えるように思う。
二郎が美しいものにしか興味がないことは、菜穂子はわかっている。だからこそ、菜穂子は一人で山に帰って、一人で死ぬ。そうすることで、二郎の記憶には美しいままの菜穂子の姿だけが残る。菜穂子は、黒川の奥さんが「きれいなところだけを好きな人に見てもらったのね」と言うように、美しい部分だけを見せる。
二郎も菜穂子も、互いに歪んだ愛情を持っているように思う。
菜穂子は絵を描く画家であり、カミーユは、画家に描かれるモデルである。描く/描かれるという差異は、死顔を見せず美しいまま死ぬ菜穂子と、美しいとは言えない青ざめていく死顔すら描かれてしまうカミーユ、という対照的な死に方にも表れる。
菜穂子は美しいまま死ぬことによって、「永遠の女」になる。菜穂子が闘病でぼろぼろな姿になったり、病気なく老いていったとすれば、きっと、美しいものにしか興味を持たない二郎は菜穂子を愛せなくなるだろう。
最後の場面でカプローニが菜穂子を「美しい風のような人だ」と言う。モネはかつて「人物を風景のように描きたい」と言い、「日傘の女」の姿を風と同化させて描いている。
つまり、この物語においては、結局、菜穂子は風景にしかすぎず、二郎が前景化されていく「二郎と零戦の物語」だ、と解釈することができるだろう。
この物語は、非常に美しく見えるが、読み解いていくと、その美しさと同じくらい残酷な物語であるといえるのである。
メモ
・永遠の女にはダンテ「神曲」のベアトリーチェも重ねられている。
飛行機・歴史好きの方にお勧めの作品
効果音は人の声、美しい絵などの素晴らしい点もあったけれど見ていて感じたのが宮崎駿が自分の好きなもの飛行機(とりわけイタリア機、ジブリも元々はイタリアの飛行機の名前)そして太平洋戦争に対する非難(勝手に満州事変をはじめ、飛行機も燃えやすく防弾性能が酷かった、輸送能力も御粗末だった)を詰め込んで作った作品だなと思った。
戦争、実らぬ恋、飛行機はジブリが推していたチェコスロバキアの戦争映画「ダークブルー」にも似た構図
当時の時代背景にそれ絡みの人物もうまく描写で来ているなと思った
宮崎駿監督の憧れ
ちょっと前に映画館でジブリを観まくったので、その勢いで連休中に観ていなかったジブリ作品を観てみよう個人的キャンペーン。というわけで「風立ちぬ」を観ました。
エンターテイメント?散々やったからもういいでしょ。それよりも自分が昔から好きだった飛行機のエンジニアの話や憧れの大正から昭和初期の話やるべ!っていう感じの作品でした。エンジニアやってる人にはビンビン来るのかもしれませんが、私はエンジニアではないので「ふーん」でした。特に苦労している雰囲気もないしなぁ。あまり主人公に感情移入できません。
それより菜穂子とのシーンの方が好きでしたね。あの時代の恋愛の意識というか、震災で出会い避暑地での再会、山の病院を抜け出して名古屋まで来て、結婚してしばらく一緒にいて、最後はちゃんと部屋を片付けて去っていく。切ないですがカッコいいと思える生きざまです。この映画を昭和にやってたら大反響だったのではないでしょうか?
でも、なんかもう庵野秀明が棒演技過ぎて。これがわからないって元々のセンスから怪しいにしろ、もう宮崎駿監督も年寄り過ぎて耳が遠くなってたのかなっと思えてちょっと悲しくなります。色々監督は考える所があったにせよ、観てるこっちは変なものは変としか感じないです。ジブリって声優で作品自体損してる気がします。勿体ないよなぁ。
ちょっと追記
レビュー書いた後に皆様のレビュー観てるとホント賛否両論で面白いです。レビュー数もメッチャ多いですし、これだけ色んな人の意見を引き出せるって単純にスゴいと思います。改めて宮崎駿監督は日本を代表する監督だと思いました。
ひたすらに「美しさ」を追求した、巨匠・宮崎駿渾身の一作!
零戦の設計者、堀越二郎の功績と恋愛を描いた長編アニメーション映画。
堀越二郎は実在の人物であるが、本作は彼の伝記映画ではない。
堀越二郎の人生と、作家・堀辰雄の自伝的作品『風立ちぬ』『菜穂子』をミックスして作り上げられた、れっきとしたフィクションである。
監督/脚本/原作は『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』のアニメ界のレジェンド、宮崎駿。
主人公堀越二郎の声を演じたのは、『エヴァンゲリオン』シリーズの監督で、『さくらん』など実写映画に出演経験もある、宮崎駿とも親交の深いアニメーション監督の庵野秀明。
二郎の友人、本庄の声を演じたのは『メゾン・ド・ヒミコ』『ストロベリーナイト』シリーズの西島秀俊。
二郎の所属する設計課の課長、服部の声を『海猿』シリーズや『パコと魔法の絵本』の國村隼が担当している。
第37回 日本アカデミー賞において、最優秀アニメーション作品賞を受賞!
第85回 ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞において、アニメ映画賞を受賞!
第41回 アニー賞において、脚本賞を受賞!
原作の同名漫画は未読。堀辰雄の小説も未読。ポール・ヴァレリーの詩も読んでないし、トーマス・マンの『魔の山』も読んでない。1900年〜1940年くらいの時代背景についても全く詳しくない。
この映画のレビューを書く資格をまったく持っていないような気がしますが、まぁ鑑賞してしまったのでレビューを書いてみたいと思います。
宮崎駿がアニメ制作に携わるようになって50年目という節目の年に発表された本作。
本作上映後、宮崎駿は長編アニメからの引退を発表したため、現状では本作が彼にとって最後の長編映画作品となっている(その後引退発言は撤回したが…)。
年齢的にもこれが最後だと覚悟して制作していたのであろう。宮崎駿の人生総決算という雰囲気が漂う大人な作品。
これまでの宮崎駿作品とは全く毛色の違う作品になっており、楽しいジブリ映画を求めて本作を鑑賞した観客から、批判の声が上がるのもやむを得ないだろう。
この映画、観る側のリテラシーが要求される一作。ある程度の教養がなければポカンとしてしまう場面も多々あると思う。
本作の最大の特徴、それはとにかく説明がないこと!
何やら聴き慣れない単語が出てくる!時代背景の解説は一切なし!作中で何年経過しているのかもわかりづらい!場所や時間がピョンピョンと飛ぶ!堀越二郎の心情も基本的に語られない!
観客をふるいにかけ、ついてこられないものは容赦なくおいていくという非常に不親切な映画。
『ガンダム』や『未来少年コナン』など、1話30分の連続アニメを2時間に編集した映画があるが、あれを観ているような気分に陥った。
それじゃあ、この映画がダメな映画なのかというと、そんなことはない。
説明は確かに不足しているが、そこは観ている観客にある程度の知識や読解力が有れば十分についていけるし、むしろ説明だらけでテンポの悪い作品に比べれば、何倍もスッキリした気持ちになれる。
多少わからないところがあっても、物語全体の方向性を見失うことはないので、あまり身構えずに素直な気持ちで楽しむことが大切だと思う。
ドイツ留学中に、逃亡者とそれを追う憲兵を見かける件がある。普通の映画ならその後逃げていた人と二郎が出会って物語が展開したりすると思うが、全くそんなことないですからねー。初めて観たとき驚きましたよ。えっ、さっきのシーン何?みたいな感じで。
カストルプさんとか、あんなに重要そうなキャラクターでありながら、全く説明のないまま物語から消えていきましたからね。
本当に普通の作品じゃない。映画におけるストーリー性とかどうでも良いのでしょう。
本作の主軸である菜穂子さんとの恋愛も、確かにロマンチックではあるのだが、ちょっと都合が良すぎるというかベタすぎる気もする。
確かに感動するし美しいのだが、あまりに理想的に描きすぎているきらいがある。
欠点を書いていくとダメダメな作品の様な気がしてくるが、何故かすごく感動してしまう。
その理由はやっぱり、宮崎駿が真剣に「美しいアニメ」を作ろうとしているからだと思う。
彼の持つ迸る様な熱意や、この映画に込めた想いが画面越しに伝わってくる。だから観客は無条件に涙を流してしまうのだと思う。
本作の主人公の堀越二郎は目が悪いことに対するコンプレックスを持っている。
朴念仁の様でありながら女の子にはすごく興味がある。
飛行機が大好きで大好きで堪らない。それが戦争の道具であることはわかっていながら、開発を止めることなど露程も思っていない。
このキャラクターは完全に宮崎駿自身の投影でしょう。アニメーションというものを飛行機に置き換えている。
アニメがただ消費されるだけのコンテンツであることをわかっていながら、それを作ることをやめられない。
周囲にどれだけ敵をつくっても、同じ道を歩む息子との間に大きな壁を作ってでも、ただ自らの理想である「美しいアニメ」を作ることに執着する。
ある意味、狂人ともいえる自分自身を客観的に観察し、自らを投影した主人公を生み出している。
二郎(宮崎駿本人)は大きな挫折と絶望を経験するが、最終的には愛するものから受け入れられて、自己を肯定するに至るというエンディングを迎えます。
ここに、宮崎駿の50年間にわたる葛藤と闘いの日々が込められており、それを乗り越え自らの仕事の功績を受け入れる姿勢に感動させられるわけです!
庵野秀明の声優起用に色々と物議が起こりましたが、個人的には全然アリ。
はじめこそ違和感があったけど、後半になればキャラクターとピッタリ一致してきて普通に泣かされます。
そもそも、自分のアバター的なキャラクターを普通の役者にやらせたくなかったのでしょう。唯一自分と同じような立場の存在であり、愛弟子のような存在である庵野秀明にこそ、宮崎駿は演じて欲しかったのではないでしょうか。
宮崎駿が引退を覚悟して作った作品に、ジブリファンとしては感動せざるをえません。
反戦映画か戦争賛美かだの、タバコ吸いすぎだの、左翼的だの、歴史認識が甘いだの、そんなことはどうでも良いのです。ただただ「美しいアニメ」を探求して作られた映画なのだから、外野の煩わしい言葉などどうでも良いのです。
そして、それは見事に成功しています。ここにこの映画を観て心を揺さぶられた者がいるのですから。
風立ちぬ
途中から涙腺ゆるみっぱなしだったので、「やばい、歳のせいか…?」と思ってましたが、皆さんのレビューでも結構、泣いておられる方がいて安心しました。
一緒にいられた僅かな時間を、本当に大切に愛おしみながら過ごす二人。
やべ、、、シーン思い出したら、また泣けてきた…。
庵野氏の棒読みをもってしても、わたしの涙を止めることは出来ませんでした。
ユーミンの「ひこうき雲」に救われた気がする
見終わってすぐにこの映画を面白いと感じられず、無の状態でエンディングの「ひこうき雲」聴いていた。歴史を全く知らない&興味がない自分はこの映画をみる資格がなかったのかもしれない。内容に関しては偉そうなことを言うつもりはないが、ヒロインと再会するのがあまりに遅すぎなのではないかと。酷評の目立つ庵野監督の声はトトロでの糸井重里ととても似た感覚で嫌いではない。宮崎駿監督が描く大人の愛をほんの少し見ることができたのが良かった。
メッセージ性
二郎の夢「ただ美しい飛行機を作りたい」は叶いはしたが戦争に使われ一機も戻らなかった。菜穂子は弱る前の美しい姿で二郎と結婚をしてその姿を愛する二郎に捧げることで寿命を減らし短命な人生を送る。この映画では「美しさを求めることは残酷である」ということがテーマになっていると思った。
また最後に菜穂子が二郎に「あなた生きて」と言う。これは妻に先立たれ、傑作の飛行機は戻って来ず、戦争も負けてしまい打ちひしがれている二郎に対して、「美しいだけじゃない人生を泥臭く生きろ。」というメッセージが込まれているのかな。監督はこれを見ている人に伝えたかったのかなと思うし、改めて宮崎駿の伝え方の上手さに感銘しました。
何かに魅せられた者の光と影。
私の身の回りでも賛否分かれる作品なんだけど、何かに心底魅せられた人間の光(エネルギー)、そしてそれ故に傍らに落ちる影を描く作品として観るなら私は素晴らしい作品だと思う。
夫婦愛の素晴らしさとか求めちゃいけない。
飛行機の美しさに魅せられ、美しい夢の世界でいきいきと敬愛するカプローニ博士と語らう堀越二郎。
彼の夢の世界のイメージ、光に溢れたカプローニ博士との飛行シーンなどは本当に素敵で、好きなものに対する喜びや理想に溢れていて、観ていてわくわくする。
(これらは監督・宮崎駿さん自身の空想でもあるんだろうね。)
あと菜穂子さんとの結婚式のシーンは本当にぞっとするほど美しい。
でも自分の理想の美しさを追い求める二郎は、結果的に第二次世界対戦の日本軍の特攻作戦に加担することとなり、愛する妻・菜穂子さんの最期にも会えないのだ。
自分の夢や理想を追い求めることは美しい。
でもそれは時に誰かを不幸にもし、また自分の他の大切なものは二の次にせざるをえないという、夢追う者の背負う業は確実にある。
何回か観てるとラストの菜穂子さんの言葉は違和感を感じてしまうな(あれは二郎の夢の世界の菜穂子さんなのだから、あれでは二郎があまりに自分勝手といえなくもない)。
様々な想いを胸に、今を生き抜く
通常スクリーンで鑑賞。
友人と観に行きました。
原作マンガは未読、「風立ちぬ」は既読です。
じわぁ…っと胸に染みてくる作品でした。多くを語らず、多くを見せず、行間が豊かで、想像力を刺激して来る描写に徹しており、心を揺さぶられました。
時空を越え、空間を越え、豊かなイマジネーションに彩られた物語は、史実と小説と空想が巧みに入り乱れながら、まるで一編の詩のように編まれていました。
堀越次郎が飛行機に捧げる情熱。彼と奈穂子が織り成す美しい生の賛歌。どれもが胸を打たれるものでした。夢、現実、苦難、愛、幸福、覚悟、後悔。およそ人生で経験するであろうことがぎっしりと詰まっているように思いました。
決して平坦では無い道のりでも、そこで出会う様々な事柄に影響を受け、時には挫折を味わうかもしれませんが、それでも進んで行かなくてはならない。想いの赴くままに…
混迷している時代だからこそ、己を見失わずに生きていくことが大切ではないかと訴えているように思いました。懸命に生き抜くこと以外に、大切なことがあろうか!?
[余談1]
主題歌「ひこうき雲」が見事なマッチング。本作と出会ったのは運命の仕業だと思いました。見事な余韻に痺れました。
[余談2]
宮崎駿監督の引退作として公開されましたが、その後宣言は撤回され、真の引退作となる「君たちはどう生きるか」の公開が待ち切れない今日この頃であります!
[以降の鑑賞記録]
2014/? ?/? ?:DVD
2015/02/20:金曜ロードSHOW!
2019/04/12:金曜ロードSHOW!
2021/08/27:金曜ロードショー
※修正(2023/10/19)
ある意味1番好きかもしれない
賛否両論あるようですが美しいけれど美しいだけじゃないとても素晴らしい映画だと思いました。二郎の菜穂子と仕事のどちらか選べないところは残酷ですがそれがリアルだと思いました。菜穂子が死ぬことをわかって見るとさらに切なく「1日1日を大切に生きたい」というセリフが胸にしみました。見返すたびに感想が変わる映画だと思います。本当に泣ける映画です。音楽もジブリのなかで1、2番目くらいに好きな美しい音楽です。少し残念なのはやはり主役の声でしょうか、、、さすがにちょっと、と思ってしまいます。宮崎駿の考えることはよくわからないと改めて思いました。
美しい表現とさりげなさ
歴史番組で紹介されるような、偉人の一生をジブリテイストに落としこんだような作品。
宮崎駿らしい遊び心や間の置き方が詰まっていて引き込まれた。
登場人物の会話や心の動きの描写にわざとらしさが無くさりげない。いい意味であっさりしている。
当時の日本の様子を文学的な雰囲気の中で生かしながらまとめるのは流石。
音に注目
劇場で見るまでにメイキング番組を見まくっていたせいで
最初はすべて口で出しているという音が気になって
そのあと色が気になって
そのあとの地震のシーンで小さい人の動きが気になって
気になっていたんだけどいつまで気にしていたかは不明です。
気が付けばどっぷり世界へワープしていました。
切なくて美しい映画でした。
ハッピーエンドが大好きな私が好きだと思える映画でした。
もう一度早く見たい。
いびつ。ある意味純文学
この作品を見た多くの人がどう受け取って良いのか戸惑ったという感想をちらほら聞きます。分かりにくさの原因は第二次世界大戦の前夜を舞台に実在の人物である堀越二郎を素材に選んだことでしょう。
堀越二郎は宮崎駿自身、飛行機設計はアニメ作り、と解釈すれば極めて分かりやすくなるでしょう。
それを面白いと思うかどうかは人によりますが、私にはけっこう興味深かったです。
風立ちぬ
✴︎あらすじ
大正から昭和にかけての日本が舞台。航空機の設計者である堀越二郎は、イタリア人飛行機製作者カプローニを尊敬し、いつか美しい飛行機を作り上げたいという夢を抱いていた。
堀越二郎が勤め先である三菱内燃機製造に向かう汽車に乗っている際、ヒロイン・里見菜穂子に出会う。乗車中、関東大震災に見まわれ、足を骨折した菜穂子の女中を救う。名前すら明かさなかった二郎だったが、その後、休暇で訪れた長野県北佐久郡軽井沢町で菜穂子に再開し、恋に落ちる。だが、彼女は母親と同じく結核に蝕まれていた。
結核を治すべく、菜穂子は遠く離れた療養所にいた。だが、二郎とともに居たいという思いから、単身、二郎の元へと向かう。そして、その晩に二郎の上司・黒川夫妻に仲人を依頼し、結婚することとなる。菜穂子の病状は思わしくなく、日に日に悪化していった。だが、一緒に暮らしたいという思いから、二郎は結婚生活を続ける。二郎は、そんな生活の中で、零戦のプロトタイプ製造に成功する。病状に限界を感じた菜穂子は、二郎、世話になった仲人や二郎の妹に手紙を残し、再び療養所へと向かう。仲人である黒川夫人は、追おうとする二郎の妹に、「追ってはなりません。…菜穂子さんは、一番良い時間を、二郎さんと過ごしたかったのね」と、菜穂子の思いを汲んで伝えた。
終戦を迎え、二郎は何度となく見たカプローニとの夢をみていた。自分で手がけた零戦の残骸の山の中で、二郎は亡くなった妻・菜穂子の姿をみる。そして消えた彼女のことを想いながらも、「残された私は、生きねば」と思うのだった。
✴︎感想
昭和の男、かっこいい。
今の時代にはあんな好青年いないよなぁ...
牛がいます
全体的には登場人物の心模様が綺麗で良かった。ただ、主人公が美しい曲線の飛行機設計に夢中になるのはわかるが、それが戦争に使われている事に関して、なんとも思っていない様子が少し疑問だった。
「牛がいます」でなぜかつぼにはまってしまい、映画館でくすくすしてしまった。
妻は夫をよく理解していたからこそ、闘病の末密かに死んでしまう儚い美しさがありますが、設計以外に無頓着な主人公は、よく言えば素朴という感じだろうか。もう少し感情移入したかった。
宮崎監督引退作だけど薄味に終わった
総合:60点 ( ストーリー:60点|キャスト:60点|演出:60点|ビジュアル:70点|音楽:75点 )
堀越二郎の半生を、飛行機作りの話と恋愛の話を通して描くが、それがどっちつかずに終わっている。元々二つの話を一緒にしているのだから当然といえばそうだが、それでもうまくまとめていれば両方楽しめたと思うのだが、残念ながらそうはなっていない。どちらの話も表面的で中途半端で、宮崎監督の自己満足にすぎない薄味な話がただ流されたという印象を受けた。
堀越二郎の飛行機作りについては、飛行機のこと勉強しています、設計しています、速度が出ていますで終了。こんなことが起きました調で技師の生い立ちを見せるだけの演出は単調で深みが無い。それに部分的に夢の幻想の話で描かれても、悪い意味で浮き足立った軽い話に見えてくる。それと庵野秀明の声は実力不足で質を低下させている。
菜穂子については、どんな人なのかすらも描写されることなく、そのためどこを好きになったのかもよくわからないままに結婚してしまって、登場人物像が全般に弱い。出会いに至る過程でどう気持ちが動いていったのかが分り辛いし、結核に苦しむ場面が少なくて、やせ衰えていく姿も描写されない。全体として現実は直視されず厳しい部分はあえて描写されない。
これで宮崎駿監督も引退か。昔から監督作品に常に登場してきた空を飛ぶ夢、そんな自分の好きなことを主題にして花道を飾りたかっのかもしれないし、興行収入としては大成功だった。
しかし厳しいことを言わせて貰えば、精魂込めたであろう引退作にしては物足りない。堀越二郎という天才の情熱も業績も彼が打ち破ってきた困難も、当時の日本の低い工業技術で世界最高の戦闘機を設計した凄さもわからなかった。ただの飛行機好きの男が技師として夢見たことや生き方と愛が、まるで夢のように過ぎ去っていったというだけ。昔から堀越二郎の話についてはいくつか本を読んでいたので、余計に実際の人物像と業績への差異もあった。監督の全盛期と個人的に思っている80年代とその前後の作品が持っていた深みや心を揺さぶるものがなかったし、期待していたものではなかった。
私はこの作品に満足はしなかった。この作品だけでなく、90年代後半からの宮崎監督の作品は必ずしも素晴らしいとは思えなかった。近年は新作が出るたびに大いに期待をしたが、いつもその期待に合う作品に出会うことはなかったし、もう期待しても駄目なのかなとも思っていた。それでもかつていくつかの素晴らしい作品を残してくれた宮崎監督は偉大であったという評価は変わらない。彼は引退するが、かつてはたくさんの感動や興奮や爽快感や躍動感を与えてくれたし、それでいい。
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