劇場公開日 2013年8月30日

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「前作よりは厚みのある恐怖映画に」貞子3D2 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5前作よりは厚みのある恐怖映画に

2013年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

怖い

前作についてケチョンケチョン(1.5判定)に書いた自分が
その続編を観たのは、本作が近年下火になっているJホラーに
トドメを刺し兼ねない大駄作になってやしないか心配だった
というのが一番の理由。
監督は続投(英勉)だし、宣伝はまたもや“貞子”をゆるキャラ扱い
するバカバカしい内容だし、『携帯はオフ』という基本マナー
ガン無視のスマ4Dなんてことまでやってるし。
普通なら出来の悪さを心配しない方がおかしい。
だが、今回は前作よりも怖いとの触れ込み。嘘か誠かは知らず、
観てもいない映画をボロクソ言うアンフェアな真似はしたくないし……
という恐ろしく後ろ向きな姿勢で鑑賞に臨んだ。

じゃ、まあ、結論から。

驚いたことに……というのも失礼な言い方だが(笑)、
思ったほど悪くなかったというのが 正直な感想。
少なくとも、前作よりは格段に出来が良い。
前作の不評ぶりに、作り手も思う所があったのかねえ。
恐怖演出の質もドラマについても確実にレベルが上がっている。
ボロクソ書きたかったのになんか若干悔しい気もする(←ヤな奴)。

恐怖演出はやっぱりビックリ箱的で持続性の無いものばかりだが、
怪異を見せるまでのタメの部分がグッと改善されている。
(ビックリ箱的恐怖は、恐怖の直前のタメが一番怖いのだ)
予告編にあったベッドに隠れるシーンにはかなりビビった。

観客を驚かす為だけの無駄なショックシーンも減っている。
登場人物が目にしていない怪異を映すのはホラーとしては反則で、
前作ではこの演出が随所に見られたのだが、今作ではそれもほぼ無い。
クモ女の大量発生も、半端なスタイリッシュアクションもナシ!

物語展開にも多少ヒネリが出たし、何より
母にまつわるトラウマを抱えた主人公という設定が、
その後の展開にも説得力を与えている。
怪異の根源と思われる少女に対してある決断を下すシーンや
最後の手を伸ばすシーンには心を動かされた。
母を失った子の孤独や後悔といった部分にも、割としっかり
焦点を当てているのだ(説明不足な部分もあるが)。
貞子という存在については前作同様モンスター同然だが
登場人物らが抱える恐怖の根っこについてフォーカスした
お陰でドラマに厚みが出た。

という訳で、前作との比較としてはグッド。
が、ホラー映画全般の中でとなると話は別だ。

これはもう多分この監督の特性だと思うのだが、
映像にJホラー特有の湿り気が感じられない。
画作りのライトで無臭な感じ、闇を活かしたシーンの少なさ、
カメラワークの抑制が利いていない点、血や水の粘着性の低さ
など、総じて海外のホラーに雰囲気が近い。
(ついでに書くと、3D効果は奥行き感高めで結構楽しめた)

恐怖の度合いとしては“中の下”くらいだろうか。
元来ビビりな僕でも目を逸らさずに観られるレベルなので、
『リング』の40~50%くらいの所が妥当な数字かと思う。
また、映画全体の雰囲気を決定付けるような強烈なビジュアルが
無いため、イマイチ特長に欠けるホラーになってしまった感も
否めない。全体のレベルは上がってるんだけどね。

という訳で、期待度低めだったせいもあって
かなり甘めにまあまあの3.0判定!としようとしたが、
肝心のオチについて不満があったので2.5判定。
あのオチだとそれまでの主人公たちの頑張りが
全部ムダになっちゃう気がするんすケド……

ともあれ、決して最悪の出来のホラーではないです。
ホラー苦手な方への入門編くらいにして観れば良いかもね。

〈2013.8.31鑑賞〉
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追記:
今回はスマ4Dではなく通常の3Dで鑑賞。
中高生がずいぶん多かったが、足を前の座席に乗っけたり
上映中もペチャクチャお喋りしたり、まあマナーが悪い悪い。
静かに楽しんでいる中高生グループも勿論いたけどね。
スマ4Dで観ていたらもっとうるさかったんだろうなと思うと、
映画とは無関係な意味でゾッとする。

浮遊きびなご