劇場公開日 2013年5月18日

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「『恐怖』ではなく『悲哀』を描いた作品。」クロユリ団地 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0『恐怖』ではなく『悲哀』を描いた作品。

2014年5月23日
PCから投稿

悲しい

本作は『恐怖』を描いたホラー。
…というよりは『悲哀』を描いた人間ドラマという雰囲気が強い作品です。
要は然程怖くないです。
事前に誤った期待をしていくと肩透かしを喰らい失望することとなるので要注意です。

で、本作のテーマなんですが。
上記を踏まえて観ると色々と考えさせられるテーマでした。
少なくとも鑑賞前の期待値を上回りました。

全体に流れるテーマは「人間の優しさと行動に伴う責任」。

強くなければ生きられない。
優しくなれないなら生きている価値がない。

しかし好意からなされた行動も思わぬ結果を招く可能性があり、好意に係らず行動には責任が常に付き纏う。
責任が取りきれない行動はするべきではない。
過去の行動の罪悪感に苛まれつつ、また同じ過ちを繰り返す、繰り返さざるを得ない登場人物達に『悲哀』を感じます。

また、主演二人の演技…特に、前田敦子の表情が良かった。

前田敦子の顔の造作は色々と賛否あるとは思いますが可愛い可愛いのアイドルの枠から大幅に食み出る恐怖に慄く表情は一見の価値有りです。
劇場内で失笑が出る程のスゴイ顔をしているシーンもありましたが
ここまで出し切る、作品に対する誠実な姿勢は好意が持てます。

惜しむらくは話の展開。
特に終盤。
それまで積上げた話とは逸脱した終盤。
登場人物のキャラもガラッと変わり無邪気が狡猾に、積極的な姿勢が消極的に。
正直、違和感を覚える終盤でした。

加えて、所々に挟まれるチープな演出。
祈祷のシーンは噴飯モノ。
神秘性と程遠い泥臭い演出は古臭く観ている側の期待感はダダ下がり。
無力感を出すための演出ならば有り得ないこともないですが、そういった意図も感じることが出来ず残念でした。

あと或る世界の描き方も酷かった。
xxx後の世界を描くのは勧善懲悪のアクション映画ではよくあるのですが、この手の話では珍しく新鮮な気持ちに。
が、如何せんセットが雑過ぎる。
忌わしさを描ききれないならば、観客の想像に任せた方がナンボかマシだった。
責任が取りきれない行動はするべきではなかったですね。

とは言え、『悲哀』を描いた人間ドラマとして観て損は無い本作。
ホラー映画が苦手な方でも安心して観れる作品。

オススメです。

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Opportunity Cost