黒い花

劇場公開日:

解説

梅崎春生の原作から、「細雪(1950)」を脚色した八住利雄がシナリオを書き、「風雲金毘羅山」の大曽根辰夫が監督に当っている。製作は杉山茂樹、主役級には「雪夫人絵図(1950)」の久我美子、「七つの宝石」の佐田啓二、「エデンの海(1950)」の鶴田浩二、「薔薇合戦」の若山セツ子、劇団「若草」の宇多川博靖、それに小沢栄、坪内美子などが主要な役で出演している。

1950年製作/97分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1950年11月18日

ストーリー

鷹野マリ子は、戦時中学徒動員にかり出され、最初は被服工場で働いていた。大空襲のあった夜女としての初潮を見たが、継母から忌わしいものを見るような態度を受けて、傷み易い乙女心をしたたかに傷つけられ、それ以来この期間が来ると自分でも制御出来ないたけたけしい心持ちになるのであった。被服工場の次に働いていた郵便局で終戦の瞬間を迎えたが、この厳粛なるべきときに郵便局主任は彼女にいどみかかろうとしたのだった。荒ぶれた心に家庭は冷たく、女学校を卒業すると洋裁学校へ行くと称して、ダンスホール通いに浮身をやつしていたが明子という変態的な女友達につきまとわれ、ついに巷のズベ公たちの中に安らかな心の憩いどころを得るようになった。けれど軽井沢に疎開していた知合いの中野家の引越手伝いに行って、息子の宗一と愛し合うようになったのも束の間、浅間山の大爆発で、宗一が死んでからは、マリ子は家庭に帰らず、ズベ公のチコのたむろする喫茶店に入りびたった。その間に、グレン隊の仲間に入っている幼友達の保に会うが、お互いに正道に立ち返るように戒め合いながら、どちらも暖く迎えてくれる家はないのだった。保が捕えられて感化院送りになったとき、保へ差入れのことで、保の仲間の隊長浅川を訪ねて、マリ子は彼から犯され悪性の病気まで染されてしまった。保は感化院を逃げ出し巷に帰って来たが、マリ子のいっそうに堕ちた姿を見ると、更生の誓いも忘れ、二人して更に泥沼へ落ち込んで行った。そして保もいつしかマリ子の病気をうつされていた。あるとき浅川から江の島行を誘われたマリ子がついて行くと、保もその仲間にいて、江の島の手前で下車した一行は、とある別荘へ強盗に押し入った。その家の娘を犯そうとしている浅川を見たとき、マリ子は、思わず彼の背後からナイフを突き刺した。浅川は、「俺のようなものは生きていれば、際限なく悪いことを重ねて行くから殺してくれた方がいいのだ」と言いながら死んで行った。こうしてマリ子は獄舎に繋がれ、弁護士の勧めで書き綴った手記が以上のようなものであった。しかしマリ子には罪の意識というものがなかった。けれど自分が事務的な裁判によって、罪を裁かれるであろうことを知っていて、自分だけが裁かれるということに、一抹の疑惑を残さずにはいられなかった。

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