偉大なるX

劇場公開日:

解説

製作は「シミキンの結婚選手」「旅裝」の細谷辰雄で、岡田日出男の原案から「安城家の舞踏会」「誘惑(1948)」「噂の男」の新藤兼人が脚本を書き「最後の鉄腕」以来の大庭秀雄の監督。カメラは「安城家の舞踏会」「誘惑(1948)」の生方敏夫が担当した。主演は「愛情十字路」「受胎」の宇佐美淳「安城家の舞踏会」「われ泣きぬれて」の津島恵子で、それに「旅裝」の清水一郎「手をつなぐ子等(1948)」(大映)「誘惑(1948)」の杉村春子、そのほか逢初夢子、殿山泰司らが出演する。

1948年製作/82分/日本
配給:松竹・大船
劇場公開日:1948年5月7日

ストーリー

売れない小説を書いてアパート内の笑い者にされている丸木文夫は混濁の世の中を立て直す「偉大なるX」を信じて、同じくこのアパートに転がりこんできた貧乏画家の裕吉とともにX運動をはじめるが、どこへ行っても狂人の寝言として相手にされない。管理人の娘の千代とダンサーに食わせてもらっている失業者の松下だけが文夫の説を支持したが、あとは「犯罪のない社会」も「平和国家」も信ぜず混濁の世の中に混濁の生き方をつづけて行こうとするものばかりだ。放送局の街頭録音に登場したことから「偉大なるX」は新聞種となり、これに対抗する怪盗Xなるものも東京に現われて、両極端に立つ二つのXはセンセイショナルな話題となった。文夫はX氏を自分の方から誘い出そうとして日比谷でX氏講演会をひらくことにした。警察では空想の人物で世の中をまどわすものとして文夫たちを召喚し、精神病者と鑑定されたが、独房で文夫と語って何ものかを感じた署長の計らいで釈放され、予定の如く講演会は開かれた。「偉大なるX」を信じるものとちょう笑する者の大群衆に取りまかれた日比谷に刻々と開会時間は迫る。--と、定刻、偉大なるX氏は万雷の拍手のうちに出現、敗こ日本の立て直しは日本人個々の胸のうちにある「偉大なるX」の発揚にあると絶叫し、多大の感銘のうちに降壇、いずくともなく消え失せた。一方この会場へX氏の精神運動を笑わんとして来た怪盗Xは警官隊に捕えられる。その夜、文夫と千代は語った。「偉大なるX氏は署長だったんだね」「だれでもいいわ。偉大なるXはみんなの胸に生まれて育ってゆくもの」。やがて偉大なる首途の朝が二人の前に、いや混濁の世の中に訪れてくることだろう。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0未だ見ぬヒーロー

2019年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 戦後日本の世の中の乱れを立て直し理想の社会を築く偉大なる英雄Xがいつかきっと現れるという内容の小説。アパートの管理人の娘・千代(津島)は原稿用紙に大きな字を書く九木を心配して母(杉村春子)に相談する。日頃から突拍子もないことを言い出す九木のことだから、てんで相手にしないのだ。

 悪を無くす平和の世を作るという街頭演説を始めてから、次第に世間の注目を浴びるようになり、ラジオ局、新聞と、架空の“偉大なるX”の理想と九木本人、それに千代までが書きたてられた。ところが、新たに世間に登場してきたのが“怪盗X”。とうとう怪盗Xは九木の前に現れ、「偉大なるXが実在するなら合わせてくれ」と挑発する。返答に困った九木は講演会を開くからとその場を後にするのだ・・・しかして、架空の存在であるXの講演会を計画するも、警察沙汰となり、精神科医の分析を受けることにまでなった。とりあえず留置所へ・・・ただ、警察署長(笠智衆)が彼に同情し、遠い目で見ていた。

 妄想狂、きちがいとバカにされ続けた九木。講演会には怪盗Xも来るので、警察が周囲を固めている。同志たちも本当に偉大なるXは来るのかと心配していた。観客も大勢集まっていた。切羽詰まったその瞬間、会場から大きな拍手が!短い演説ではあったが、覆面をした偉大なるXの演説が始まった。署長がXであることは間違いなかったが、一人ひとりがXの理想を持たねばならないと結論づけた。また、怪盗X(安部徹)は捕えられた。

 1955年が日本映画で初のヌードと言われているが、この1948年の映画でしっかりとストリッパーがヌードで踊っていた。おっぱいも腋毛もしっかり見せてたぞ!ちょっとビックリ。

 テーマとしてはヒーローの存在も考えられるが、この時期にはまだ『スーパージャイアンツ』も『月光仮面』も『ナショナルキッド』も存在していないのだ。まぁ、サイボーグでもロボットでもないけど、世の中の人間全てが悪を無くそうと努力すればいいのだから、力のない者であってもいいのだ。なんだかスッキリした。笠智衆もやるな~

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kossy
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