劇場公開日 1956年9月11日

狙われた男(1956)のレビュー・感想・評価

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5.0中平康監督の傑作!

2022年7月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞。

やっと見れた中平康監督のこの映画、タイトルからしてアメリカのノワール映画っぽいが、「日活ノワール」とでも言うような作品で傑作!

オープニングで「眼のアップ」がスクリーン全体に映されて、ビルの屋上から銀座の街の俯瞰シーンが移動して路地裏を映す。いやぁ、見事なシーン。
そして路地裏で女性の悲鳴、美容院のマダムが殺される事件、「また、まっ昼間の銀座殺人?」という会話&新聞……というテンポ良く進む物語が楽しい。

そして、警部(内藤武敏)が殺人現場の近くの聞き込み捜査をはじめると、近所の住民たち(北林谷栄、下條正巳、松下達夫など)の場面切替えも速く、前科者の青年(牧真介)が「どうせ、俺が殺人を犯したことがある前科者だから疑っているんだろ」と警部に言うのを近所の人達がドアの外で聞いていて、アッという間に皆が知ることとなる情報管理の緩さが楽しい…(笑)

時々、中平康監督らしさを見せるショットがあって、「なんか斜めの構図だな…」と思うと、それは「腕枕している男(前科者)の視線をとらえたショット」であった。
冒頭の銀座の俯瞰シーンなどと同様、素晴らしい!

更に、男の死体が水辺で発見されるが、このあたりから2つの殺人事件を追及するドラマとなっていき、クライマックスのビル屋上シーンでのアクション場面もナイス!

物凄い展開に眼を見張る映画だが、これだけ盛りだくさんの内容を70分の物語にまとめた新藤兼人の脚本が素晴らしい。

サスペンス映画好きは必見の映画だが、未ソフト化が勿体ない傑作である。

<映倫No.2214>

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たいちぃ