透明人間(1954)

劇場公開日:

解説

「ゴジラ(1954)」に次ぐ東宝の怪奇スリラーで別府啓の原案を日高繁明が脚本を書き、「幽霊男」の小田基義が監督に当る。撮影・特技監督は「ゴジラ(1954)」の円谷英二である。出演者は「幽霊男」の河津清三郎、「お夏清十郎」の三条美紀「あんみつ姫」の藤原釜足、「継母」の高田稔、「地獄への復讐」の植村謙二郎のほか村上冬樹、土屋嘉男、恩田清二郎、童謡歌手の近藤圭子など。

1954年製作/70分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1954年12月29日

ストーリー

銀座で透明人間が自動車に轢かれた。死体の持っていた手紙で、あと一名の透明人間が都内にいることが分った。新聞記者の小松は、目撃者として透明人間の取材に当った。ナイトクラブ黒船のボーイ長健は、歌手の美千代に野心を持っていたが、ピエロの南条に美千代は救われた。包帯で顔をかくした透明人間が現われ、競馬場、銀行等が次々と襲われた。警視庁は透明人間の捜査に全力をあげたが、手掛りはなかった。南条の住むアパートには盲目の少女まりが、お爺さんと住んでおり、南条はまりを可愛がっていた。芝浦の倉庫番をしていたお爺さんがある日透明人間に殺された。南条は、その夜小松に彼自身が特攻隊員として造られた透明人間であることを発見された。彼の潔白を信じる小松と南条は、黒船の支配人矢島と健が犯人であることを突きとめた。健に脅迫され麻薬の密売を強いられた美千代は、透明体の南条に救われた。ピエロ姿になった南条と美千代が公園にいる時、矢島と健が現われ、南条に手先きになることを要求したが拒まれ、南条を透明体にし、自動車の氾濫する中に投げ出した。矢島等が祝盃を上げようとした時、透明体の南条が現われた。目に見えない靴音が矢島と健を追い、逃げる自動車の行手を重油タンクにはばまれた矢島は、タンクに登り、透明体の南条と激しく格闘したが、ピストルがタンクに射ち込まれ爆発した。落ちる矢島と重なる様に南条の体が浮き出し、夢中ですがる美千代に抱かれて南条は死んだ。

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映画レビュー

3.5特撮は一人で撮れはしません 多くのスタッフが必要なのです そのチームを鍛え上げていく それもまた特撮をリードしていく人間の役割でもあるのです

2023年3月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

1954年公開 東宝、白黒作品

冒頭のスタッフロールに「特殊技術 東宝技術部」とでます
あれ?円谷英二の名前は?と思ったら監督のひとつ手前で大きく「撮影、特殊技術指導 円谷英二」とでます

円谷英二が大映で特撮を担当した「透明人間あらわる」から5年が経っていました

その作品は1949年9月公開でした
それから2年半後の1952年2月にGHQの公職追放が解除され、円谷英二は東宝に復帰を果たしていました

東宝争議も沈静化してようやく仕事ができる雰囲気にもなっていたようです

東宝を退職して復社するまでの4年間は、「円谷特殊技術研究所」を設立して活動していました
といっても東京祖師谷の自宅の庭に建てたプレハブの事務所です
映画会社各社の特撮パートを請け負うという仕事です
まだ戦後すぐの混乱期ですから大規模な特撮の仕事なぞあるものでなし、あってもノンクレジットのごく短いものばかりです
本格的な特撮映画は大映で撮ったその「透明人間あらわる」だけです
円谷英二は大映への入社を予定してしていたようですが結局断念しています

理由は円谷がその作品の特撮の出来映えに満足がいかなかったからだとされていますが、これはなにか裏に事情があった言い方のように思えます
というのもそれほど悪い特撮ではなかったからです

この時点では公職追放が解除されて東宝に復社できる目処もなく、経済的にも困窮していましたから大映への入社はなんとしてもしたかったはずです

推測としては大映の方から入社を断られたのかも知れません
特撮の円谷と日本中に知れ渡っているビッグネームですから大映も是が非でも欲しい人材のはずです
結局、公職追放の人物を採用するのはGHQへの遠慮があったのだと思います
横槍がどこかからあったのかも知れません

いや、もしかしたら本作のスタッフロールで円谷英二の名前がデカデカとでているのを観て東宝が仰天して、円谷英二に正式な復社は無理でも嘱託としてならば雇用できると連絡をとったのかも知れません

それで大映への入社を頼んでおきながら自分から断らざるを得なくなり、あのような断り方をするしかなかったのかも知れません

その両方であるのかもしれません

ともかく翌1950年には嘱託としてながらも東宝に復帰します
社員としては復帰させられないながらも嘱託として東宝所属にしないと大映に円谷を取られてしまうという判断だと思います
円谷にしても同じ嘱託ならば大映よりも古巣の東宝の方が良いに決まってます
東宝で嘱託の給与をもらい特撮の研究をしながら時期を待つのです

1952年2月には円谷は晴れて東宝に正式に復社を果たします
公職追放さえ解除されれば、東宝も気兼ねなく社員として正式に円谷を呼び戻せたのです
なんと言っても円谷英二は、「ハワイ・マレー沖海戦」などの大成功に対して1944年8月12日の東宝創立記念日に功労者表彰を贈ったほどの重要人物なのですから

東宝に復社して最初の仕事は、1953年10月の「太平洋の鷲」です
これは「ハワイ・マレー沖海戦」の続編とも言える内容かもしれません
その次は1954年2月公開の「さらばラバウル」です
そして三番目が同年11月3日公開の「ゴジラ」だったのです

では本作は?
その「ゴジラ」の次で、同年12月29日だったのです

その間、たった2ヶ月弱です
怪獣映画のように大規模な特撮ではないので撮れたのかも知れません
スタッフロールの「撮影、特殊技術指導 円谷英二」の「指導」というところに着目したいと思います

東宝技術部の面々を5年前に一度手がけた透明人間ものをもう一度使って鍛えようということだったと思います

そうして次の円谷英二は作品は1955年4月公開の「ゴジラの逆襲」になるのです
以降怒涛のように特撮映画が撮られていくのです

特撮は一人で撮れはしません
多くのスタッフが必要なのです
そのチームを鍛え上げていく
それもまた特撮をリードしていく人間の役割でもあるのです

さて、本作の内容は?
はっきり言ってつまりません
残念ながら成功作とはとても言えません
5 年前の大映で撮った「透明人間あらわる」の方がずっと面白いです

透明人間が戦時中軍部が開発した特殊兵器だったという独自の設定ですがお話にはあまりつながりません
透明人間は包帯グルグル巻きのミイラにトレンチコートとサングラスと帽子という姿形であるという固定観念を、ピエロなら人前にでれるぞというアイデアはまあまあ面白い
でもお話は結局下世話なレベルで終始して終わります

ただ終盤のガスタンクの炎上シーンはなかなか良い特撮です
あと「透明人間あらわる」ではサイドカーでお茶を濁していましたが、今作では二輪のスクーターを無人で走らせて見せています
もっとも小さな補助輪が見えているのはご愛嬌です

日本の特撮映画の歴史の中での意義や価値?

本作は円谷英二が特撮映画の量産体制を作るのだと意識した映画だということではないでしょうか?

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あき240

4.0透明人間特攻隊の生き残り

2020年11月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

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しゅうへい
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