美女と盗賊

劇場公開日:

解説

加賀四郎の企画で、芥川龍之介の名作『偸盗』から取材して、「月よりの母」の八木隆一郎が、「惜春(1952)」の監督木村恵吾に協力してシナリオを書き、木村恵吾が監督に当ったものである。「惜春(1952)」は木村監督が全部を手がけていないので、厳密に言えば、「三万両五十三次」に次ぐ同監督の作品ともいえよう。撮影は「母子船」の山崎安一郎である。衣裳考証を甲斐莊楠音が受持っている。出演者の主なものは、「滝の白糸(1952)」の森雅之と京マチ子に、「上海の女」の三國連太郎で、菅井一郎、北林谷栄、東野英治郎、加東大介、千秋実、志村喬、望月優子などが助演している。

1952年製作/104分/日本
原題:Beauty and the Thieves
配給:大映
劇場公開日:1952年9月23日

ストーリー

平安朝の末期、京洛の街は悪税と天災のため、飢える者、病むものにみちて、人々は塗炭の苦しみにあった。その間を、一人の美貌の女頭目が指揮する偸盗の群が出没して、更に人々の恐怖を増していた。女頭目の名は沙金と呼ばれ、その美しい姿態の魅力をもって、群がり寄る男たちを思いのまま手玉にとっていた。そのため彼女のまわりには絶えず男たちの血なまぐさい争闘がくりかえされた。黒木の太郎もその何人目かの男で、彼は沙金のため地位もすて、一介の野盗になりさがりながら、尚も沙金の心をつかみ得ぬ悩みと、悔恨のなかに毎日を送っていた。荒くれた偸盗の群れは、猪熊のお爺、お婆が元締の格で、女といっては沙金のほかに阿漕という、誰の胤とも知れぬ子を宿した阿保な娘が一人いるだけだった。太郎の弟、次郎は、はるばる都へ兄をたずねて来たが、ゆきずりのおんなのため路銀を奪われ途方にくれた。しかし、ようやくにして兄の居所をつきとめると同時に、情ない兄の境遇を知って、兄の心をひるがえさせるまではその傍を離れまいと決心した。しかし、貪欲な沙金の眼はこの純真な青年にそそがれていた。兄を救うつもりの次郎が、いつしか沙金の罠にひっかかって行った。しかも彼女は新しい情人次郎のためにその兄の太郎を亡きものにしようとの企みで、無理と知りつつとある邸を襲った。味方は予想通り大敗を喫した。太郎を死地に追い込んだまま沙金と一緒にひきあげた次郎の心にも一抹の良心と兄弟の愛情が残っていた。沙金の手をふり切ると次郎はまっしぐらに太郎を救うために走り去った。羅生門の暗がりで、爺と婆も息をひきとった。そして阿漕は男の子を産み落した。爺の子だった。死骸を見送って一人たたずむ沙金の前に太郎と次郎が姿を現わした。沙金は不吉な予感からいち早く逃げようとしたが、すでにその背へ次郎の太刀が走っていた。藪のなかを、廃寺を、泥沼を野獣の様に逃げのびる沙金のあとを兄弟の鋭い刃が追った。かくして、たぐいまれな美貌の悪女はその数奇な一生を終ったのだった。

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