劇場公開日 1970年8月29日

その人は女教師のレビュー・感想・評価

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4.0その人は女教師

2012年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

出目昌伸の作品だが、作品自体はフランス5月革命の最中に起こった高校生と女性教師の引き裂かれた愛と国家権力との軋轢を描いた仏映画「愛のために死す」の日本リメイク版なのだが、ディテイルやリアリティとしては当作品の方が数段上。
68年当時首相だった佐藤栄作の発案で開かれた伊豆川奈でのASPAC国際会議に反対して激しく政治活動を行った地元の静岡県立KN高校の高校生たちの学園闘争を実際の背景に置いているから、不自然さがなく、実際にバリケード封鎖の後、学校はロックアウト体制をとり、放水車を含む機動隊との激突など、当時KN高には全国から支援の活動家も結集して大きな学園闘争となった。
本編に出てくるような、都会育ちで大学闘争を経験した新任の女子教員が実際にいたかどうか、反戦活動家の高校生と恋に落ちたかどうかは不明だが、当時の雰囲気としてはそれはそれでありうる話だと思う。68年10.8新宿騒乱罪適用の夜、警察官に追われる男を、恋人のように振る舞いとっさにキス迄して救ってやる位の事は当時の時代を背負った女子学生ならやっただろう。
むろん、その偶然の出会いに赴任校で再遭遇するというのは、まぁありえない話でこれ以降はフィクションだが、映画初出演の三船史郎の存在感、若かった岩下志麻の魅力もあって、それなりに唐突ではない話が展開されているのは出目の映画作りの上手さではないか。
レンタルDVDには常にあってほしい1枚だ。70年前後の学園闘争の記憶を失わないためにも。

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satoka