幻の馬車

解説

「グレート・ワルツ」、の「人生の終」に次ぐジュリアン・デュヴィヴィエ監督作品で、セルマ・ラーゲレーヴ作小説『死神の馭者』に基づいてデュヴィヴィエ自ら脚本を書き、台詞は「ドン・キホーテ(1933)」と同じくアレクサンドル・アルヌーが執筆した。出演俳優は「大いなる幻影」「椿姫(1934)」のピエール・フレネー、「舞踏会の手帖」「外人部隊(1933)」のマリー・ベル、「舞踏会の手帖」「フロウ氏の犯罪」のルイ・ジューヴェ、新人ミシュリーヌ・フランセイ、「背信」「禁男の家」のヴァランティーヌ・テシエ、「イレ・シャルマン」で子役だったジャン・メルカントン、新人アリアーヌ・ボルグ、「憧れの君よ」のアンリ・ナッシェ、「南方飛行」のアレクサンダー・リニョオ、「ゴルゴダの丘」のロベール・ル・ヴィギャン、「フロウ氏の犯罪」のミラ・パレリー、「どん底」のジェナン其の他である。音楽は「ドン・キホーテ(1933)」「ゴルゴダの丘」のジャック・イベール、撮影は「望郷(1937)」「我等の仲間」のジュール・クリュージェが、セットは「望郷(1937)」「地の果てを行く」のジャック・クロースがそれぞれ担当している。なお、同原作はヴィクトル・シェーストレムにより、1920年に「霊魂の不滅」のタイトルで映画化されている。

1939年製作/93分/フランス
原題:La Charrette Fantome

ストーリー

フランスのブルターニュ地方には、毎年除夜の鐘が鳴る時に死んだ者は、その後一年間「幻の馬車」の馭者となり、死人の所へ訪れてその迷える魂を冥府へ連れて行くという伝説が語り伝えられている。クリスマスの日、救世軍の接待に集まった浮浪者達の中で一人の老婆が不意に馬車の軋る音が聞こえると叫び出した。これを聞きとがめたのは「学者」と綽名されるジョルジュだった。硝子吹き職人上りのダヴィッドとギュスターヴは、老婆の話を一笑に附して相手にしなかった。その晩救世軍では女士官エディットの指揮で建てた宿泊所の落成式を挙げた。その夜この三人組が酒場を出て来ると、子供達が大勢サンタクロースの後からついて行くのを見て、神様を嫌いなダヴィッドは子供を追い払おうとした。怒った子供等が雪つぶてを投げるので、三人は汚い酒場へ逃げ込んだ。ジョルジュはそこに居た一人の無頼漢をこらしめたが、不意にその男のため背中を刺されて倒れる。そして捕まったのは、兄を連れて帰ろうとして来合わせたダヴィッドの弟ピエールだった。逸早く逃れたダヴィッドが飛び込んだ所は、救世軍の宿泊所である。エディットは彼を神の遺した男と信じ親切に泊めてやった上、その魂を清めようと努めるが、悪にしみこんだダヴッイドには何の利目も見えない。傷ついたジョルジュは病院のベッドの上で除夜の鐘を聞く。馬車の軋る音が耳につくと、彼はそれを逃れようとして病院の屋根から落ちて此の世を去る。やがて春となってもダヴィッドは相変わらず酒びたりである。哀れな妻と二人の子供もすてて顧みようとしない彼に、エディットは不思議に心を惹かれて忘れる事ができないのだった。献身的な辛労から胸を痛めた彼女は、行方の知れぬダヴィッドが必ず帰って来ると信じて疑わなかった。かつては彼の仲間だったギュスターヴは、今は救世軍の下士となって秘かにエディットへ愛を捧げている。秋もすぎ冬となって再びクリスマスの夜が来た時、エディットは明日をも知れぬ重態の身で、なおダヴィドの来るのを信じて待った。ギュスターヴから聞いた仲間がダヴィッドを連れて行こうとするが、応じないので争った末、胸を突かれた彼は血を吐いて倒れる。除夜の鐘が鳴り出し、彼は夢幻の中に馬車を馭して通りかかったジョルジュと会う。その車に乗せられて、彼は自分の不徳から妻子や弟が不幸に陥っているのを見た。病床で尚も自分を信じて待っている神の如きエディットを見た。ダヴィッドは今一度罪滅ぼしをさせてくれとジョルジュに頼む。そして再び此の世に返されたダヴィッドは、神を信じ不幸な妻子を守るために我家へ向かうのであった。

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