恋は魔術師

劇場公開日:

解説

監督アレクサンドロフは「ストライキ」「戦艦ポチョムキン」「十月」「全線」等においてエイゼンシュテインの共同監督として著名であり、その作品には日本でも公開された音楽喜劇「陽気な連中」(一九三四)、「サーカス」「ウォルガ」(一九三八年)「明るい道」(一九四〇年)のほか、戦時中に「戦争映画集粹」「一家族」「潜水艦T9号」等を発表しており、戦後最初の作品たる「春」は一九四七年度ヴェニス国際映画コンクールで一等入選をした。撮影のエケリチークは日本でも公開された「イワン」のほか「シチヨルス」「ボグダン・フメリニッキイ」等のカメラマンとして著名である。一人二役で主演のリュボーフイ・オルロワは「陽気な連中」以後のアレクサンドロフ作品全部に主演しているソ連映画最大の人気女優の一人であり、相手役ニコライ・チェルカーソフはソ連人民俳優の称号をもち、エイゼンシュティンの「アレクサンドル・ネフスキー」および「イワン雷帝(1946)」に主演し、ペトロフの「ピヨートル一世」ではピヨートルの子アレクセイにふんし、そのメイク・アップ技巧は現在ソ連映画界における最高のものといわれている。なお、作曲者ドワナエフスキイは「陽気な連中」以来、アレクサンドロフ作品の作曲を担当しているソ連軽音楽界第一人者である。

1947年製作/ソ連
原題:Spring
劇場公開日:1948年8月

ストーリー

モスクワの春の往来を二人の男が何かを物色しながら歩いている。これは映画監督グローモフが助手のムーヒンと共に、こんど製作する有名な女科学者イリーナ・ニキーチナをヒロインとする映画の主演女優をさがしているのである。二人は自動車上のイリーナとうり二つの女を追いかけるが、あにはからんやこの女は本人のイリーナであった。ようやく研究所の実験室で彼女に追いついて映画出演をたのんだが、もともと映画のきらいな彼女は貴重な研究時間を割くことなど真っぴらだとにべもなく断ってしまう。監督グローモフはやむなくこの女科学者に非常によく似たオペラ女優ウェラ・シャトロフに主役をたのむが彼女の映画出演を好まないオペラ劇場の支配人は、あたらしいオペラの主役に彼女をふりあててしまった。ウェラは両方の役をよくばったが、困ったことには劇場と撮影所の練習の時間が同じなのである。そこでウェラはイリーナを自分の身代りに撮影所へやるためシナリオについて主人公の性格などを説明したが、科学者の姿がゆがめられてシナリオに描かれていることを知ったイリーナは撮影所へゆき監督に訂正を申しこもうと決心する。ウェラにふんしてあらわれたイリーナを見た監督は、彼女がすこしも科学者らしくないのでメイク・アップや衣しょうをかえて科学者らしくみせかけようと苦心をする。イリーナは、科学者が人生から切りはなされた人間であり、都会のなかの砂ばくに住む人間のようにシナリオが描かれていることに文句をつけるうち、しだいに映画をつくる仕事に興味を覚えてくる。一方、メリニコフ教授の家には多くの学者や作家たちが集まり、イリーナを待っているが、いつになっても彼女の姿が見えないので、気の利いた新聞記者がイリーナの身代りとして例の女優ウェラを呼んでくる。全然自分とは縁のない世界にひっぱりだされたウェラは、監督に教えられたように、冷たく、ツヤもなくふるまってみたがどうもうまくゆかないので、監督の教えをすてて陽気に騒いだり歌ったりしはじめる。学者たちはイリーナがこんなにいきいきとしているのにおどろき、新聞記者はこのにせの科学者にほれぼれとした。一方監督は科学者の役をみごとに演ずるにせの女優の天分にすっかり心をうばわれる。二人のにせ者がいろいろな事件を起すが、やがて一切がはっきりとして、すべてがめでたくおさまる。

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