蒼い幻想

解説

「モンテ・カルロ」に出演したジャック・ブキャナンが主演する音楽映画で、かつて「デカメロン夜話」「ネル・ギン」を監督したハーバート・ウィルコックスが監督に当った。原作はホルト・マーヴェルとジョージ・ポスフォードが共同している。作曲もポスフォードである。相手役は新進のアンナ・ニーグルが勤め、ジョイス・ブランド、クライヴ・カリーのほかウィルコックス作品にはお馴染みの俳優連が数名助演している。

1932年製作/イギリス
原題:The Blue Danube Magic Night

ストーリー

オーストリアの陸軍大尉マクシミリアン・シュレトフは陽気な軍人さんだった。酒と女とワルツと、来る日も来る日も遊び暮らして歓楽を尽くした。時は一九一四年バルカンの空には暗雲が漂っていたが、シュレトフ大尉殿は連隊きっての快活な、男振りのいい将校として呑気に女達の尻を追いまわしていた。そして幾人かの女達の心を破り、失恋に泣かせてマックスの気持ちは朗らかだった。マックスは永遠に独身将校の楽しさを続けたいと思っていることは勿論である。そのマックスがこの女だけは妻に迎えて生涯の苦楽を共にしたいと思う女が現れた。花屋の売り子のヴィキが、この浮気者の胸を騒がせた娘である。ヴィキもマックスには心を惹かれた。二人は好いて好かれた。マックスが身を堅める気になった折も折、彼の父親シュレトフ将軍は皇帝陛下のお声がかりでマックスに伯爵令嬢ヘルガと婚約せよと言いつけた。マックスは皇帝のお望みである以上断り切れないことを察して、先手をうってヴィキと駈落をするつもりだった。その時世界大戦は始まり、マックスは父将軍の命令で即刻出征せねばならなかった。ヴィキの手許にはマックスの愛の手紙は届かず、将軍の筆になるマックスと伯爵令嬢ヘルガの婚約通知状のみが届けられた。かくて愛人は仲を割かれた。大戦が終わった時敗戦国オーストリアは混乱の極に達した。マックスは靴屋の手代だった。そして昔のヴィキはオペラのスターだった。ヴィキはマックスに知らぬ顔をした。マックスはそれを恋の復讐とは知らず、境遇の転変のせいだと思った。しかし二人はやはり心の底では愛し合っていた。過ぎし日に二人が恋を語り合ったカフェェで逢った時、懐かしいワルツの一曲は二人の身をも心をも結びつけたのである。

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