炎え上るバルカン

解説

「北京の嵐」「ヴェニスの船唄」のグスタフ・フレーリッヒ、「モスコーの夜は更けて」「モンブランの王者」のブリギッテ・ホルナイ、「囁きの木蔭」「最後のギャング」のローゼ・シュトラドナーが主演する映画で、ペーター・フランクとワォルター・ズッパーが協力書卸した脚本により「沐浴」「黒い瞳(1935)」のヴィクトル・トゥールジャンスキーが監督に当たりカール・プートが撮影した。助演者は「乞食学生」のフリッツ・カンパース、「モスコーの夜は更けて」のアリベルト・ヴェッシャー、「女人禁制」のハリー・リートケ、カール・ヘルマー等である。なお音楽は「モスコーの夜は更けて」のワルター・グロノスタイが受け持っている。

1936年製作/93分/ドイツ
原題:Stadt Anatol

ストーリー

鉱山技師ジャックは、数年前追われる様にして去った小アジアの寒村アナトールへ、輝かしい計画を持って帰って来た。彼は村の娘フランチェスカを尋ね、亡父の残した砂山を買いとった。そこから二人は共同で石油を試堀して見ようというのだ。無学で野性的なフランチェスカは、石油などはどうでもよかったがジャックの男らしい魅力にひかれて承知した。仕事は夜に日をついで行われたが、石油は仲々湧き出ない。ジャックの資本家ガルシアはこれ以上の資金を注ぎ込む事を断って来た。あと一週間で石油の層に達する予定だった。ジャックの困惑を見たフランチェスカは、かねて自分に想いを寄せるヤスクルスキーを訪れて五万フランを借りた。彼はこの時とばかり挑み掛かったが、その時石油が湧き出した報せがあったので、彼女は金をたたきつけて逃れ出た。石油坑では工夫達が高く噴出した石油を浴びて男泣きに泣いていた。フランチェスカがジャックの仕事場にかけつけると、彼と楽しげに語っているのは土地の旧家の令嬢ソニヤだった。石油都市アナトールは、素晴らしい繁栄と共に悪徳と破廉恥の町に変わった。ヤスクルスキーも石油試堀に手をつけたが失敗し、恋の恨みと併せてジャックに深い嫉みを抱いた。ソニヤも邸の中で試堀にかかった。技師長はジャックである。今夜は石油が出るという夜、邸ではガルシアを始め金持ち達を集めて夜会が開かれたが、湧き出したのは普通の地下水だった。金が目当てのソニヤはジャックに冷ややかな目をむけて、金持ちのガルシアと親しくした。その時ヤスクルスキーがジャックの油田にダイナマイトを投げ込んだので、アナトール市は一瞬にして天地も覆る騒ぎとなった。フランチェスカは重なり合った屍体の中から、重傷のジャックを救い出した。彼女の看護で息を吹き返したジャックは富も悪徳も一切のものが焼きつくされたのを見た。残されたのは彼の不屈な闘志とフランチェスカの変わらぬ愛情だけである。もう一度立ち上がろう。今度は二人で手をつなぎ新しい健康なアナトールを建設しようと、堅く決心をするのだった。

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