ヴェニスの船唄

解説

「桃源郷」「少年探偵団」のゲルハルト・ランプレヒトが監督した映画で、オッフェンバッハ作の歌劇『ホフマン物語』に取材して「ジャンダーク」「あかつき」のゲルハルト・メンツェルが書卸したものである。主演者は舞台から来たリダ・バーロヴァと「偽国旗の下に」「予審」のグスタフ・フレーリッヒで、「ジャンダーク」のヴィリー・ビルゲル、「セロ弾く乙女」のエルザ・ワグナー、「ヴェロニカの花束」のヒルデ・ヒルデブラント、「私と女王様」のヒューバート・フォン・マイヤーリンク、ウィル・ドーム及び「制服の処女(1931)」のエミリア・ウンダが助演している。撮影は「歌へ今宵を」「セロ弾く乙女」のフリーデル・ベーン・グルントが、音楽はハンス・オットー・ボルクマンが夫々担任。

1935年製作/81分/ドイツ
原題:Barcarole

ストーリー

一九一一年のヴェニス。バルカローレの祭りの夜。独身クラブ員の若いコロレド伯爵はメキシコ人ツバランが八年前無理矢理に妻としたジャチンタがそれ以来すべての男を厭い夫にも身を任せないで緑玉の肌守りを身に着けて不幸な孤独の生活をしているのを聞いた。彼は早速賭をして明朝九時迄に彼女を自分のものにし緑玉の肌守りを持って帰ると叫んだ。居合わせた人々は皆莫大な金を賭けた。その時コロレドの背後でツバランが言った。「俺も勝負に乗ろう、賭に勝てば名誉を傷つけられた夫として決闘を申し込む、敗れれば俺は君に最初の一発を射込む。」ツバランが無類の射手であることを知る人々は驚いたが自分の能力と幸運を信じるコロレドはこれを承知し、ジャチンタの宿に向かった。ジャチンタは明日夫の郷里メキシコへ行かねばならぬのでヴェニスに於ける最後の夜をバルカローレの祭りへ出掛けた。そして扉口でコロレドと会った。二人は一目見て互いに恋し合う様になった。而もコロレドは彼女がジャチンタと知って愕然とした。二人は同じゴンドラに乗った。二人を乗せた船は歓楽境と化したバルカローレの祭の中を進んだ。やがて二人はゴンドラを捨て静かな宿に入った。疲れたジャチンタはコロレドに抱かれて暫し眠った。コロレドは自分が始めて恋した女が戯れの賭の的である事を悲しんだ。そしてその賭を彼女には知らせたくなかった。その時目覚めたジャチンタは彼に悪い事が起こらぬ様にと禄玉の肌守りを与えた。翌朝九時に独身クラブへコロレドは静かな哀しい顔で入って行った。「僕は賭に負けた」一座はさっと青ざめた。ツバランはピストルを取り上げた。コロレドは悪びれずこの無類の射手の的になった。轟然と一発コロレドは前に倒れた。親友のモッタが駈け寄って胸を開くとジャチンタの禄玉は血に染んでいた。コロレドは弱々しく友に囁いた。「これを彼女に返してくれ、ツバランの知らぬ内に。そして僕は彼女を愛したと伝えて呉れ。最初のそして最後の愛で--ジャチンタ」これがコロレド伯爵の最後だった。

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