郷愁(1935)

解説

「朝やけ」「偽むらさき」のルドルフ・フォルスターが「黒鯨亭」のアンゲラ・ザローカーを相手として主演する映画で、ドイツ劇壇の演出者であるエリッヒ・エンゲルが監督に当たったもの。シナリオはハインリヒ・オーバーレンダーが書き卸し、キャメラは「君を夢みて」のブルーノ・モンディが、音楽は「未完成交響楽(1933)」「たそがれの維納」のウィリー・シュミット・ゲントナーが、それぞれ担任した。助演者は「たそがれの維納」のハンス・モーザーを始めとして、「恋は終りぬ」のハンス・ホマ、リーズル・キナースト、ダイナ・グレイス、等である。

1935年製作/90分/オーストリア
原題:Hohe Schule

ストーリー

ウィーンの町は近くここのヴァリエテに欧州で評判の名馬術使カルロ・カヴェリが来るというので、その噂で持ち切っていた。だが、誰一人としてこのカヴェリの前身を知っているものはなかった。この秘密を知っているのはカヴェリ自身と、彼のマネージャーのブラントラーだけである。所が、実はカヴェリにとって此のウィーンは故郷なのである。思えば十五年の昔、彼はヴェルフェン伯爵であり、大尉であった。それが敬愛する将軍ケッテラーの子息であり、彼の朋友であったフランツ中尉と決闘して、中尉を拳銃でたおして以来、職を退いて、身を隠したのである。そして今は馬術使カヴェリであり、仮面をつけて舞台に現れるのであった。その頃、ケッテラー将軍の家は財政に窮し、将軍婦人は娘のイレーネを金持ちに嫁そうとしていた。だが、イレーネはそれを嫌い、乗馬に長じていたことから、カヴェリの門に入って馬術を習い、舞台に立って生活しようと考えた。カヴェリは彼女の身許を知らずに、行き掛かり上、弟子にしたのであるが、実はこの娘こそ十五年前の将軍の幼女なのを知ると愕然とした。将軍は彼を息子の仇として憎んでいる。しかも、カヴェリはイレーネと会う日の重なるにつれて、彼女に惹きつけられて行く己れの身を知った。そしてイレーネもカヴェリに頼もしい男の魅力を感じた。そして或夜、二人が小屋に閉じ込められた時、二人の心は触れ合った。カヴェリは悶えた。そして、彼女と別れようと決心し、イレーネを他国の名馬術使の下に勉強に送ろうとまでした。だが、結局はイレーネの誕生日の祝いに、彼女を訪れて恋を打ち開けたのであった。イレーネが父に結婚の許しを求めに行った時、彼女はカヴェリこそかつて兄を殺した人物であることを知った。将軍はカヴェリが伯爵だと知るや彼を殺そうとした。で、イレーネは己が恋を諦めて彼と二度と会うまいと彼に云い送った。すると此の時、カヴェリは将軍を昔の同僚と共に訪れて過去の堅い秘密を始めて打ち明けた。それはフランツ中尉が金に窮して売国行為をなしたため、カヴェリが決闘に事よせて銃殺したのであった。決闘したというのも、中尉と将軍との不名誉を世間に覆うためのカヴェリの心使いなのである。これを知った将軍は、始めてカヴェリに温かい手をさし延べた。

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