怪人マブゼ博士(1932)

劇場公開日:

解説

「M」と同じくフリッツ・ラングが監督に当ったネロ映画で、原作脚色テア・フォン・ハルボウ、撮影フリッツ・アルノ・ワグナー及びカール・ファース、装置エリッヒ・ハスラーのスタッフは全部「M」同様である。主なる出演者はサイレントの昔にもドクトル・マブーゼを演じ、後「ヴォルガ」「スピオーネ」に出演したルドルフ・クライン・ロッゲ、「熱沙の女王」「死の銀嶺」のグスタフ・ディースル、「トンネル」「M」のオットー・ヴェルニッケ、新進のヴェラ・リムセイ、カール・マイクスナー等である。

1933年製作/122分/ドイツ
原題:The Last Will of Dr. Mabuse Das Testament des Dr. Mabuse
配給:三映社
劇場公開日:1935年2月28日

ストーリー

ベルリン郊外の荒屋にギャングが巣食っていた。その頭目はドクトルと称するが、姿はいつも見せずカーテンの後から声だけで命令を発するのだ。涜職馘首された元刑事ホフマイスターは名誉快復の目的で、このギャングの巣窟に潜入した。探偵長ローマンの許に、頭目の名が判った、と電話がかかったが、電話の声はそこで絶えた。急遽、現場を襲うと窓硝子の一枚に「マブゼ」と書いてあるのみだった。そのマブゼは精神病学者バウム教授の研究材料として当時教授の研究室に監禁されてあったので、教授は新しいマブゼ怪盗団と、教授の研究資料の精神病者マブゼは無関係だと主張した。その犯罪狂マブゼは一夜研究室内で死亡してしまう。新聞はマブゼの死を報じたが、ローマンは検死の結果、死体がマブゼ本人であるかを疑った。一方頭目の訃報に呆然たる団員達の前に、突如カーテンの彼方から昨日と同じ頭目の声が響いて来た。団員中にケントという青年があるが、彼は恋人の女役人リリーの勤めで自首を決意した。途端に捕えられてカーテンを隔てた頭目に訊問を受ける。激昂したケントは声に向かって発砲するが声は依然として嘲けるのであった。ケントがカーテンを引きちぎると奥には肖像画と拡声器あるのみだった。そして拡声器はケントとリリーに死の宣告を下したが辛くも脱出したケントはローマンと共に教授の研究室に赴く。室の中から聞える教授の声が頭目の声そっくりなので、ケントが扉を押して入ると拡声器があるのみだった。ローマンはバウムを療養所へと追跡すると、居合せたホフマイスターが、バウム教授を指して、彼がマブゼです、と告げた。教授はマブゼの遺書整理中、死せるマブゼの意思代行者として精神上マブゼに変身していたのであった。

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映画レビュー

4.0フィクションとしてのリアリティさえ担保してくれたらねえ…

2023年8月31日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

テーマとアイデアは抜群に面白かったのだが、ストーリー展開が、あまりにも予想通り。
意外性があったのはラストだけだったが、あのラストにしても、ちょっと唐突。
あとツッコミどころも、まあまああるし。
冒頭、潜入していた元刑事を御都合主義な展開で逃してしまうとか(まあ、逃げてくれないと次のプロットには繋がらないのだが、あれじゃホント出来の悪いコント)
また、その元刑事が発狂してしまうほどの恐怖なんて、本当にあの暗闇の一瞬だけで有り得たのか?まさかのマブゼの仕業?であれば、これまた都合が良すぎる!とか。
そして、当時のSP盤レコードの音質で、肉声との違いに気付かないのは(ドア越しとはいえ)ムリがあるだろう?とか(BGMでオーケストラのSP盤を流してれば、まだ自然だったろうに)
やはり、まだまだ映画が荒唐無稽で当たり前、そもそも、それがディフォルトでしょ?とでも言わんばかりの時代。そんな諸々のシーンは、ちょいちょいと出てくる。

では、観る価値など殆どないのか?というと?そんなことは全くない。
とにかく、冒頭から不穏な空気満載のカメラワークが本当に素晴らしい。
そして、その不穏な空気を増幅させるサウンド効果も音楽も含めて文句なしに響いてくる。
また狂気に取り憑かれた役者たちの芝居も的確で見事。ああいうのは下手なのが演ると本当に見てられないのだが、きっちりリアルに見せていて流石だ。

まあ要するに、もっと本気で不自然なプロットを全て排除して、工夫を施して、黒幕の存在も意外性ある展開にしてれば、間違いなく大傑作になったに違いない。

純粋悪というヤツは、本当に時代を超えて普遍性があるので、改めてプロットを完璧にして、誰かリメイクして欲しい。
もちろん前作での悪のカリスマ炸裂!マブゼの暗躍を含めた三部作で。
あえてナチス台頭の時代背景のままがイイ。
誰か作って!デル・トロ以外で!

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osmt