ガソリン・ボーイ三人組

解説

オペレッタ映画「愛のワルツ」で一躍売り出したウィルヘルム・ディーレの監督になる作品で、脚本の組立は「ワルツに合わした二つの心」のフランツ・シュルツ、パウル・フランクの二人が当たった。主なる出演者は「ハンガリア狂想曲」「悲歌」のヴィリー・フリッチを筆頭に舞台出のハインツ・リューマン、「西部戦線一九一八年」のフリッツ・カンパース、「嘆きの天使」のクルト・ゲロン、「拳闘王」のオルガ・チェホーワ、リリアン・ハーヴェイ、オスカー・カールワイスなど、キャメラは新人フランツ・プラナーである。

1930年製作/ドイツ
原題:The Three From the Gas Station Die Drei von der Tankstelle

ストーリー

彼等は不景気なんか知らなかったんです。それで良い気持ちで自動車旅行なんかして来ちゃったんです。ところが久しぶりでベルリンに帰ってみるとあの取付騒ぎでしょう。もちろん三人の財産などというものは跡形もありません。職を探そうにも目下四百万人を超す失業時代にこんな呑気なお坊っちゃん達に仕事をさせてくれるような慈善家はありません。三人は文殊の知恵を絞った挙げ句、素敵な名案を思いつきました。自動車を売ってサービス・ステーションを始めるのです。ガソリン・ボーイ三人組なんてちょっとシックじゃありませんか。そこで三人はかわるがわるサービス・ステーションに勤めることになりました。するとここに一人の美しい御得意客が現れました。リリアンというお転婆娘です。このお嬢様のお父様というのは有名なお金持ちで目下エディスという美しい夫人と結婚したがっているのですが、娘のリリアンの猛烈な反対論のために弱っているのです。リリアンは毎日三人組のガソリン・ボーイの所にガソリンを買いに参ります。三人組はめいめい内心得意であります。もちろん美しいリリアン嬢は自分のために毎日来てくれるのだとめいめいが思っているのですから。ところがこの頃リリアン嬢はあまりお父様の結婚問題に関して喧しいことを言わなくなりました。その上エディス夫人と仲良しになって色々夫人から恋の手管を教わっております。嬢は恋をしたのであります。三人組の一人ウィリー君に。けれど同じく夢中に嬢を恋している二人のお友達に向かってなんと言ったらよいのでしょう。エディス夫人はハッキリ言っておしまいなさいよ。生殺しは罪よとおっしゃいます。そこでリリアン嬢は先生のお言葉通りを実行いたしました。ところが結果は大失敗。恋よりも友情を重んじるウィリー君はかんかんに怒って(内心は知りませんが)家を飛び出してしまいました。こうなると気は強くてもやっぱり女性であるリリアン嬢は泣きながら先生のもとへ相談に参ります。このお嬢様に失恋でもされたら最後、お金持ちのお父様との結婚など永遠におじゃんと見て取ったエディス夫人は満身の知恵を傾けて第二段の方法に取り掛かります。エディス夫人はまず「破産商会」という会社を創立いたしました。そして例の三人組をこの会社の重役に据えました。けれどウィリー君は新任のタイピストがリリアン嬢と知ると心中は甚だ不愉快です。すぐさま辞職を打たせます。そしてそっぽを向いたままリリアンの差し出した書類にサインをしてしまったのです。ところがその書類が大変なものでした。リリアン嬢との結婚承諾書。ウィリー君は騙されたと悔しがっても追付きません。牧師が来るやら指輪をはめるやら、やっているうちに、満更悪い気持ちでもないのです。陽気なフィナーレの幕が上がって、大乱痴気が始まり、それで終わりです。

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