背教者ジュリアノ

解説

多神教徒とキリスト教徒との間に起った争闘を書いてある時代劇である。オリンポスの神を信ずるジュリアノが厚い信仰心から起る不敵の勇、それに依ってローマ人と争い、終に一矢に依って命を奪われるまでイタリア物には似合わしい作品である。美しい着色と大仕掛けな舞台装置が見物。無声。(全四篇)

1919年製作/イタリア
原題:Julian the Apostate

ストーリー

父を失い、母を失った燐れな少年ジュリアノは兄のガルスと唯二人で生活していた。ジュリアノに取って唯一の忠実なる伝育官マルドニウスはジュリアノの肩に手を掛けて話した。「ガリレア人は我々の先祖を亡ぼし、オリムプスの神に対して無礼を働いた。我々は立たなければならない」と。ジュリアノは自分の父ユリウスを殺した仇敵を決して忘れなかった。亡ぼされたオリムプスの神のため、一生を通じてジュリアノはキリストの敵として闘うべく信仰心は燃え上った。彼は成長して立派なる若者となったとき、コンスタンティヌス大帝の使者は来って彼を拉致し去った。彼は従容として宮中に赴いた。我が一族の血に染められた手に接吻するとき、彼の血潮は湧き起った。ギリシャの妖女、艶なる姿の皇妃ユーセビアはジュリアノに対して恋をしたのであった。多くの将卒は皆ジュリアノを慕った。そして彼のためには犬馬の労も厭ではなかった。ジュリアノの軍勢がダリューブの河岸に進んだ事を聞いたコンスタンティヌスは驚いて急ぎ帰ったが不幸にして途中病に斃れた。ユーセビア皇妃はジュリアノを誘惑せんとしたが鉄石の如き彼には何の効果も奏しなかった。ジュリアノの軍は常に勝った。が人心は次第にキリスト教に向って走り、孤独の悲哀を味わねばならなくなった。勇敢なローマの軍と勝負を決した時ジュリアノは戦死した「ガリレア人よ汝は勝てりキリスト教は勝てり」とは彼の最後の悲しい一語であった。

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