阿修羅王国

解説

ギリシャの大詩人ホーマーの叙事詩『イリアッド』中の興味深いエピソードをドイツで有名な脚色家ハンス・カイザー氏が脚色し、第一篇をヘレナ掠奪(Plunder of Helena)とし、古希臘の神々に英雄佳人の一大ロマンスを幻想的に取扱い、第二部トロイの陥落(Fall of Troja)に至る迄の戦争の刺激的な物語である。監督は「賢者ナータン」と同じくマンフレッド・ノア氏で、「月光の曲(1920)」「ネロ」等出演のエディ・ダルクレア嬢、「カラマゾーフ兄弟」「ジーグフリード」等出演のハンナ・ラルフ嬢、「名花サッフォー」「ゴーレム」等出演のアルバート・シュタインリュック氏、「海底の宝庫」「百獣の王」等出演のカール・デ・フォークト氏等が出演している。(無声、全二篇)

1924年製作/ドイツ
原題:Helena

ストーリー

トロイ王プリアモスは予言者の言葉によって、己が王国の滅亡の禍源たるべき末の子を山に捨てたが、パリスと呼ばれたその子は牧者の美しい立派な青年となった。ある日牛羊の群に伍してうつらうつらと夢心地でいるとオリムボスの三女神--ヘラの大神、アテネ・アフロディテが現れ、三神の中何れが最も美しいか定めてくれと云う。パリスは世界一の美人を約束してくれたアフロディテを選定したのがあのトロイ大戦争の原因である。スパルタ王メネラウスは世に稀な佳人ヘレナと共に大闘技場で二輪馬車競技を行う。その後でヘレナは独り神殿に詣でる時、不思議な因縁で、そこへ漂着したパリスと一目見て深い恋に陥ちる。二人は船に同乗してトロイへ帰る。これを知って激怒したメネラウスは、アガメンノン、アキレス等のギリシアの英雄達と多数の兵船を艤して攻め来る。海上に陸上に、トロイ王城一帯は阿鼻叫喚、修羅場と化す。美しきヘレナの力はよく青年パリスの意気を鼓舞し、一勝一敗、勢伯仲したる時、アガメンノンはパリスと一騎打ちの勝負をして遂にパリスを敗った。以来トロイの城には次第に暗い陰が覆う様になる。ヘクトルは弟パリスに代わって獅子奮迅の勇戦をするが、漸く萌さし来ったヘレナへの道ならぬ恋と、妻アンドロマッヘの嫉妬に苦しみ、遂にギリシアの英雄、アキレスと戦車上の一騎打に投鎗に殺される。城中、汪然として戦禍を呪い、パリス及びヘレナを恨む声が涌いた。が夫を失ったアンドロマッヘは敢然として戦を主張し、パリスをして詭計を設けて仇敵アキレスを射て殺さしめる。ギリシア軍は最後の計を定め一夜、巨大の木馬の腹中に奇兵を蔵してトロイの堅城内に導かれる。夜半、これを知ったパリスは、恋の花巳に凋びトロイの滅亡旦夕に迫った今の運命を知って遂にメネラウスの強弓の前に立って倒れる。老いたトロイ王は予言者の言が余りにも眼前に現れ、光輝いた王国の最後の悲惨を見て狂い死ぬ。燃え上がる焔の中をメネラウスは馳せ来って、かつて己の無情の為に去り過ちを犯した妻を許して優しく抱擁する。

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