化石騎士

解説

題材に演出に、扮装に背景に、かなり表現派手法を採り入れたフィルム・バラアドで、映画劇用に書き下ろした原作者二人のうちの一人であるハルボウ嬢が多分脚色したのだろうと思われる。字幕は二つ唄の文句が出る以外は総てスポークン・タイトルである。そして非常に数が少ない。監督は、本邦に此の映画で初めて紹介せられたヴェンドハウゼン博士。主役のクライン・ロッゲ氏は再びドクトル・マブゼに於ける氏を想起せしむるに足る大芝居と強く鋭く印象深いその鉄の様な演技とを見せている。「スワリン姫」にも出て居たルチー・マンハイム嬢、「月の家」に出ていたグスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム氏、グレエフ・ベルゲル嬢等お馴染の人々の顔も見える。撮影は例の名撮影者「ドクトル・マブゼ」や「朝から夜中まで」等のカール・ホフマン氏。無声。

1923年製作/ドイツ
原題:The Stone Rider Der Steinerne Reiter

ストーリー

村の外れの池の端、若き人々が婚礼の宴に踊り狂った春の日に、髪も鬚も真白なる年老にける琵琶弾きが、琵琶に合わせて語り出せる今に伝わる化石の騎士が物語。その頃この村は陽気ではなかった。村では婚礼を挙げるものはなかった。婚礼があると必ず山からは恐ろしい城主が馬に乗って下って来た。陽の光を覆い隠して。岩山の上に神を信じ神を崇い神の声を聞く羊飼の乙女が居た。乙女はその妹の婚礼ある事を聞いた時にも尚下界に降ろうとはしなかったが、妹が婚礼の祝の時城主に接吻され城主を刺さんとした花婿の刃によって却って命を失った事を知った時に、始めて山を降った。闇の夜を短刀を手に乙女は山の城主の館へと行った。乙女が刃をふりあげて城主を刺そうとした時乙女は意外な事を知った。城主は一人で淋しく泣いていた。城主の強い意志の力が乙女を包んだ。乙女の聖の様な気高さは城主を動かした。城主の面が始めて晴れやかに見えた。城では二人の婚礼の式が挙げられようとした。その夜、久しく圧政に苦しんでいた村人は暴動を起こして城を襲い、城主を捕らえた。乙女は救い主とあがめられた。しかし愛の力は、祝いの夜に乙女をして城主の縛めの縄を解かせ、二人は一匹の駒に乗って逃れ去らんとした。村人の追跡も及ばなかった。乙女を恋する猟夫も行手を遮って却って突き落とされた。がしかし、神の怒りは降った。燃ゆる陽の光りは暁の雲を破って迸り、一閃の電、二人を駒諸共、山の頂きにハタと止めた。爾来、嵐の日も風の夜も恋の情熱そのままに山の頂に化石の騎士はその狂える姿を残している。

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