マダム・ルカミエー

解説

世の中は征服し得たけれど女の心を征服し得なかったナポレオンの裏面史である。「マリア・マグダレナ」と同じツェレピ会社の作品で、ハンス・ガウス氏の原作、ヨゼフ・デルモント氏の監督である。ドイツ劇壇の名花フェルン・アンドラ嬢が後にルカミエ夫人と成るジュリエットに扮して居る。ドイツ製のフランス時代劇として興味あるものであろう。無声。

1920年製作/ドイツ
原題:Madam Recamier

ストーリー

一介の退職士官ナポレオンは名優タルマの紹介で僧院長バラと知り合い、その推薦に依ってイタリアに遠征したが、百戦百勝赫々武勲を樹て凱旋し、折から反対党の王党員を駆逐して遂にフランスの支配者と成る。そしてバラの情婦なるジョセフィンに執心しそれを妃とした。しかし多情なる彼女は俳優タルマに思いを移して居たので妃の不身持ちに悶々たるナポレオンの心はジュリエットなる女の上に傾いて行った。ジュリエットは高潔な女でタルマと相愛の仲であったが故あって名目上逓信局長ルカミエの妻と成って居たのである。或日ジュリエットはナポレオンの執心を拒絶し彼女の父が怒ってナポレオンを射ったので父は逆鱗に触れて死刑の宣告を下される。彼女はタルマと相計って父の赦免を乞うて許され刑場へと急いだが時すでに遅く父は処刑された後であった。あまつさえルカミエが王党の陰謀に関係せる嫌疑によって彼女一家は国外放逐の刑に処せられる事に成る。タルマは彼女と行動を共にする積もりで居たが折から皇帝戴冠式の余興にロミオとジュリエットの芝居を勅令で委嘱され、やむなく舞台に立ったが閉場後投獄される事を知って一策を案じ、大詰の場で仮死の毒薬を仰ぎ、皇帝や妃等に本当に死せるものと思わせ、やがて蘇生せるやジュリエットと共に逃走し当てなき流浪の途に上った。

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