THE BEATLES シェアスタジアムのレビュー・感想・評価

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4.0アメリカでのTVスペシャルの曲部分をレコード音源に差し替えてそのまま劇場公開

2023年10月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

日本では、1977年8月に松竹・富士映画配給により、『シェアスタジアムコンサート』と『マジカルミステリーツアー』の二本立てで、「丸の内松竹」劇場などで公開されたバージョン。(上映時間は、両者合わせて1時間44分との記載。)

このコンサートは初の大規模なスタジアムコンサートとして、音楽の歴史において「ポピュラー音楽史上初となる野球場で行なわれたコンサート」として知られているものである。

1977年5月20日に我が国でも『ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!』のタイトルでようやく初のLive音源が公になったが、我が国では来日時の'66年日本公演がTV放送されて以降、公式にライブの映像を観ることは叶わなかった。
そこでこの、1977年8月に劇場公開された『シェアスタジアムコンサート』と『マジカルミステリーツアー』というのには非常に期待して鑑賞に臨んだ。

しかし、このような古いTV用素材にも関わらず、事前のチラシ等の告知には、「4チャンネル・超ステレオ音響」の文字が!?
なんだかイヤな予感がしていた....

そして、その予感は的中した。
その時の上映は、元々『The Beatles at Shea Stadium』のタイトルで、1965年8月15日のシェイ・スタジアムで行なわれたビートルズのコンサートを収録したTV特番のために放送用に製作されたドキュメンタリーフィルムをそのまま使い、劇場用に音源をレコードに入れ替えて”擬似4チャンネル化”して劇場公開したものだったのである。

さらに、この時代のビートルズ・コンサートは基本的に12曲の30分程度のフォーマットに決まっていたが、このコンサート特番では不完全収録となっており、演奏された楽曲のうちの2曲が未収録となっている。

しかも、実は差し替えられてしまった元々の音源でさえも、そのままでは聴くに耐えない録音状態を改善するために大半の曲はオーヴァーダビングであとから音が重ねられ、一部は別音源との差し替えも行われているため、元のフィルム収録の音源自体が”純粋な実況録音”をそのまま収録したものではなかった。
それでも、せめて「家でいつも聞いているレコードと同じ音」ではない、当時の空気感を感じる事ができる音源で聴いてみたかった.....

これでは全てが台無しである。

しかし、この呪いは2016年の、ロン・ハワード監督による『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』が公開された際に同時上映された『シェイ・スタジアム公演』は、映像が4Kリマスターされ、更に前述の映画作成のために世界中から素材の提供を呼びかけた中から、ファンによって撮影された未公開の16mmカラー映像を演奏シーンなどが欠落して足りなかった箇所に差し替えたコンサートフィルム的な編集に改変が行われたことにより、解消された。
映像が全くの残されていなかった、「 She's a Woman 」についても、映画本編には含まれていなかったものの、この編集版ではその音源のみ、エンドクレジットの音声として追加されていた。
コンサート部分がメインの作品にリニューアルされたバージョンとなった映像を目の当たりにできたことによって、やっとこの呪いも解かれたと言えよう。

サウンドも、ビートルズのプロデューサーだったジョージ・マーティン氏の息子であるジャイルズ・マーティンによって音源がリマスタリングされ、その素晴らしい臨場感には驚愕、感動せずにいられなかった。
(元のフィルム素材の音源がベースにはなっていたようではあるが....)
尚、著作権の関係が解決出来ていない関係からか、『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』のBD、DVDにこの『シェイ・スタジアム公演』が収録されなかったことは残念でならなかったが.....

実に、39年ぶりの宿願は果たされた。

参考までに、このスタジアムの呼び方について、映画公開当時や古い年代には『シェア』と呼ばれていたが、現在ではアメリカでの発音に準じて『シェイ』と呼ぶのが一般的となったので、混在している感じに。
特に、映画のタイトルは今更変わることはありませんので.....

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アンディ・ロビンソン