紫の騎士

解説

「感傷の秋」に次ぐジョージ・フィッツモーリス氏監督作品で、ミナ・カロリン・スミス女史とユージン・ウッドワード氏との合作になる物語をベス・メレディス女史とフィリップ・バーソロメイ氏とが脚色したもの。主役は「決死隊」「ドン・ファン(1926)」「美人国二人行脚」等出演のメアイ・アスター嬢と「椿姫(1927)」出演のギルバート・ローランド氏が演じ、「感傷の秋」「悲恋舞曲」等出演のモンタギュー・ラヴ氏を始め、グスタフ・フォン・セイフェルティッツ氏、アンドレ・シュロン氏、フロラ・フインチ嬢等が助演している。

1927年製作/アメリカ
原題:Rose of the Golden West

ストーリー

昔時のカルフォルニアは移住したスペイン貴族等に分領されて、宛然封建時代に髣髴たるものがあったが、この物語の起った時すなわち千八百四十六年には既に封建貴族等はその懶惰と没分曉のため没落に瀕し、民衆は合衆国の民主自由の制に憧れていた。この時封建貴族の頭梁株で執政官たるロメロ将軍は貴族としての従来の位置を失わないために、合衆国よりも寧ろ露西亜帝国に従うことを欲し着々その歩を進めていた。心ある人々は専制露西亜に国を売らんとするロメロ将軍を憎み彼を誅せんことを計り、若き愛国の志士ファン・デル・カスティリョが刺客の役に選ばれた。彼はその夜僧房の処女ロジタと結婚する筈であったがこのために延ばさねばならなかった。翌日ロメロ将軍はこの僧房を訪れ己れはロジタの父の親友と称して彼女をモントレイへと伴い行くことになった。ロジタは幼時から僧房に在って両親を知らなかった。将軍は敵に人質にとられることを惧れてロジタの父たることを秘密にしていたのだった。モントレイへ行く途中ロジタを乗せた馬車が狂奔逸走し始めた。同じ道を急ぐファンは我が恋人の馬車とは知らず止めてやった。将軍は名乗らず彼に深謝した。そして別れた後将軍は再び路駅の宿でファンに逢い図らずも彼が己れを狙う刺客と知ったが、心に期する所ある将軍はロメロの邸宅に催さるる饗宴の日を約した。ファンは将軍を同志と信じていたが饗宴の日始めて同志と信じた彼が将軍であり、しかも恋人ロジタの父であると知って煩悶した。そして祖国のために将軍を刺さんとして囚われの身となった。ロジタは図らずも寺院の大鐘を合図に合衆国軍艦から陸戦隊が上陸することを知り、ファンの死刑時刻前に鐘を鳴らさせるために偽って露国使節オリモフ公爵と結婚式を挙げることにした。結婚式を告ぐる鐘を合図の鐘と信じた合衆国軍艦は大砲を発射し陸戦隊を上陸せしめてモントレイの町を占領した。かくてファンは銃殺を免れると共に将軍を殺す必要がなくなり、ロジタと結婚することが出来たのである。

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