マダムX

解説

かつて1920年にポーリン・フレデリックがゴールドウィン社で主演したことのあるアレクサンドル・ビッソン原作の有名なる同名戯曲を再び映画化したもので、俳優より監督に転じたライオネル・バリモアが第1回の作品である。ウィラード・マックが台詞を執筆し、「俺は水兵」のアーサー・リードが撮影を担任。主役は「サラアと其の子」「笑う女」にも出演した舞台出のルース・チャッタートンが特に招かれて演じ、「野性の蘭」「恋多き女」のルイス・ストーン、「海の狼(1930)」のレイモンド・ハケット、「疑惑の渦」のホームズ・ハーバート、ユージェニー・ベッセラー、ウルリッヒ・ハウプトとの他が助演している。

1929年製作/アメリカ
原題:Madame X

ストーリー

パリの法律家フロリオは理智に富んだ冷たい人間である。彼の妻ジャクリーンが幼児を捨てて家出したのも、彼の責任がないとはいえない。ジャクリーンは、しかし普通の母性型の女だった。彼女にはどうしても幼児レイモンの事が忘れられない。しかもレイモンが病気だということを耳にしては、矢もたても堪らず、夫の家に帰って来た。夫フロリオは、しかし元のごとく冷たかった。ただひとめだけ子供に会わせてくれを頼む妻の涙も彼の心を暖めることは出来なった。街頭へ--他人の世界へ、妻は出ていくことを余儀なくされる。ジャクリーンはこうした不幸の女の当然たどるべき道をたどった。東洋へ、南洋へ、そうしてさらに南米へ、彼女の淪落の旅を流れて行った。酒が彼女の刹那的の存在を慰めてくれるだけである。遂には旅舎の支払いにさえ差し支える身の上となった。ある日、同宿のラロックなるいかがわしき経歴の男と知り合った。窮迫のどん底にある彼女はこの男にすがるよりほかはなかった。幾日かの共同生活が続いた。ラロックはもちろんジャクリーンを喰い物にしようという悪漢だった。ある晩、酔後にうっかり彼女が漏らした昔の名から、その夫が今では押しも押されぬパリの法曹界の権威であることをしり、彼女の今の境遇を種に莫大な金子を強請しようと計画する。この事を知ったジャクリーンは飄然として自分の恐ろしい汚らしい生活を悟り、一子レイモンの名誉のためラロックを射殺する。公判廷に立ったジャクリーンが弁護人の役を買って出た人間は誰あろう彼女が一子のレイモンであった。レイモンはもちろん自分が弁護する哀れむべき女が自分の母であるとは知らない。母もまたこの青年が自分の血肉を分けたレイモンだとは知らない。裁判は進行する。やがて裁判長の呼んだ弁護士の名を聞いてジャクリーンは、この青年こそ我が子レイモンだと知った。その驚き、その悲しみ、その喜び。興奮から彼女は控え室に連れ去られる。レイモンに向かって彼女は言う。「レイモン、こう呼ばせて下さい。私はお金もないし何もない女です。何ともお礼のしようがありませんただひとつあなたの知らない『母親の接吻』をあげましょう」こう言った彼女は我が子レイモンを接吻する。これが真の母親の接吻であることを知らないレイモンの腕に抱かれたままジャクリーンは死んで行った。

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