餓ゆるアメリカ

解説

「つばめの天使」と同じくウィリアム・A・ウェルマンが監督したリチャード・バーセルメス主演映画で、「拳闘のキャグネー」の共同脚色者ロバート・ロードとウィルソン・ミヅナーが共同して書き下ろしたものである。撮影は「生の創め」「タキシー」のジェームズ・ヴァン・ツリースが受け持った。「生の創め」のアリーン・マクマホン及びローレッタ・ヤングを筆頭に「恋愛百科全集」のゴードン・ウェストコット、ロバート・バラット、ナャールス・グレイプウィンなどが助演者の主なるものである。

1933年製作/アメリカ
原題:Heroes For Sale

ストーリー

欧州戦争に出征したトムは適軍の機関銃隊を爆破し、士官を捕虜にしたが、重傷を負って倒れたので、同じ村出身のロジャーが自分の功績として報告し、名誉ある勲章を受ける。トムは敵の野戦病院に運ばれ命をとりとめて、連合軍の戦線に送還されるが、戦地のこととて満足な手当ては恵まれず、モルヒネの過用のためにモルヒネ中毒者になってしまう。凱旋の船上で、ロジャーは死んだと思ったトムに会う。彼は大いに良心に咎めるが、トムが暴露する様な男でないのを知り一安心する。その後トムはロジャーの父の銀行に勤めるが、モルヒネ中毒者ということが知れロジャーの父に放逐され、療養院に送られる。6ケ月後、全快して退院するが、1人の母親は既に死んでいた。トムは漂然、シカゴへ行き、安食堂を経営している一家に下宿し、メリーとルースという二人の娘と知り合い、ルースと恋に陥る。トムはルースの世話で洗濯工場に勤め、間もなく才幹を認められて重要な地位に就く。二人が結婚して程なく、同じ下宿にいたマクスという技師が洗濯機械を発明して、トムの力で特許を取ることができ、その洗濯会社に貸付ることになる。賃金を下げたり、人数を淘汰したりしない条件付きであったので工場の能率は増し、従業員一同は心から愉快な数年を送る。トムとルースの間に男の子が生まれて3年ほど後、工場主が急死し、新しい資本主が経営することになると、以前の約束を無視してトムほか大勢の職工が馘首された。一同は違約を責めたが新工場主は聞き入れず群衆をなだめていたトムは首謀者と間違われて5年の懲役になり、妻のルースは混雑の間に命を落とす。彼は幼児をメリーに託して下獄する。トムの入獄中、洗濯工場が払う機械の権利金はしだいに積もって出獄の日には5万ドルを超えていた。が、彼はその金を受け取らず、巷に群がる失業者に無料給食を計画する。その頃、全米には失業者が充満し、左傾思想を帯びた者の策動する気配が見えたので、多くの危険人物が各州から追放される。トムは前科者の故に、その一味と誤認されてシカゴを追放される。トムは息子を再び、メリーに託し、あてのない流浪の旅に出る。ある雨の夜、彼はゆくりなくも昔の自分の功を奪ったロジャーの落魄した姿を見かける。すべてを奪われた者に恩怨の念はなかった。二人は暗い夜を歩き続ける。その頃、シカゴの旧居では、メリーの指揮の下に数百千の失業者に対し日ごと夜ごとに温かい食事が与えられていた。壁に見えるトムの像に対して、敬虔の心を持たない者はなかった。

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スタッフ・キャスト

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