俺俺 特集: 三木聡監督が明かす「俺俺」の楽しみ方 「33人いたら、それこそ33通りの答えがある」

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俺俺

劇場公開日 2013年5月25日
2013年6月19日更新

三木聡監督が明かす「俺俺」の楽しみ方
「33人いたら、それこそ33通りの答えがある」

「時効警察」「インスタント沼」の奇才・三木聡がメガホンをとり、KAT-TUNの亀梨和也が主演を務めるという異色タッグが話題の「俺俺」(公開中)。「こういう映画になるとは、大部分の人は予想しなかったはず」と三木監督が語る同作は、主人公の「俺」が増殖し、亀梨本人が実に33役を演じるという、ある意味“デビッド・リンチ的”な不条理サスペンスだ。日常が徐々に不可思議な非日常と化し、見る者をなんとも収まりの悪い気持ちにさせる上、さらに見終わった後にもジワジワと効いてくる同作について、三木監督に聞いた。(取材・文・写真/編集部)

KAT-TUNの亀梨和也との異色コラボで最新作に挑んだ KAT-TUNの亀梨和也との異色コラボで最新作に挑んだ

●見る人によって異なる「俺俺」の答えに、監督自身も驚いた!

作品への思いを明かす三木監督 作品への思いを明かす三木監督 [拡大画像]

三木監督が「俺俺」でテーマとして掲げたのは、「見る人がそれぞれの見方をして、自分なりの答えを見つけてもらえるようにすること。33人いたら、それこそ33通りの答えがあるような」だったと言う。「物語の明確な提示はない」と言い切り、だが、三木作品ファンにとってはすでにおなじみの、ポスターや看板ほかこだわり抜かれた意味深なサインが画面の隅々に配され、観客の心を(無意識のうちに)につかむ仕掛けは幾重にも張りめぐらされている。だがその仕掛けは、すでに当初の思惑を離れ、監督自身も自覚していなかったような観客の反応を生んでいる。

「知人のひとりで、整体やヒーリングといった身体的なことに関心の高いライターさんがいるんですが、彼は主人公の均がどの時点で誰と体が接触したかをポイントに見たそうです。言葉や文字と同じく“触れる”という行為もまたコミュニケーションの方法ですよね。不条理な状況に均が追い込まれていくとき、少なくとも接触していれば、そこに実体として存在する=リアルだと判断できる。ひとつのキーワードと言えると思います」

また、先日大学で講義を行った際にも、「同じ年代、性別が集まっているコミュニティなのに、学生それぞれが自分の観点で見る傾向が分かって、発見があった」と驚く。

「もちろん“俺”が増殖していくストーリーが気になって見ていく人もいるんですが、均のアパートと実家のキッチンはわざと相似形に作ってあったりして、そういう“モノの配置”で見る人がいたり、不穏な空気感──キーになるシーンでは必ず“制御しきれない”象徴として水や液体を出しているんですが、そこに注目して見ていく人もいます。1回目よりは2回目以降の方がもっと客観的に見るようになるので、モノの配置には気づきやすくなるんですけど」


●物語の明確な説明がない!? こんなエンタメがあってもいい

“増殖”をイメージさせるサイン “増殖”をイメージさせるサイン [拡大画像]
給水塔はCGではなく実際の建物 給水塔はCGではなく実際の建物 [拡大画像]

三木作品といえば、日常からずれていく不条理な世界観が特徴的だが、なぜ彼はそうした作品を生み出し続けるのか。

「分かりやすいストーリーにワクワクして、ここで笑ってください、ここで泣いてくださいっていう映画に気持ちを動かされるのももちろん否定はしませんけど、意味の分からないもので不安を投げかけたときに、観客が自分なりに答えを探すというか、納得するために右往左往するのもエンターテインメントの方法論としてはありなんじゃないかと思うんです。自分なりの答えが見つかったなら、それが正解かどうかなんて問題ではなくて。だから今回、『俺俺』みたいな映画ができたことは幸せなことですし、こういう作品を撮る監督がもっと増えればいいのにと思います(笑)」

不条理ものの大御所、デビッド・リンチ監督の名前を挙げると、「作品についての説明は一切なし、取材も受けなきゃオーディオコメンタリーもやらないっていう。そりゃあなたは分かってるかもしれないけど、言われない限りは、『マルホランド・ドライブ』が『サンセット大通り』にオマージュを捧げてるなんて分かんないわけです」と笑う。

「でも自分なりに、あれはダイアン(ナオミ・ワッツ)の幻想と現実なんだって気がつけば、なんとなく分かる。それで改めて見ると、1回目じゃ気がつかなかったことがすごく分かる。もっと、(映画の)そういう見方を面白がってくれてもいいのになあ……という思いはありますね」


●スクリーンの隅々までに目を凝らせ! 三木作品初心者に贈る「俺俺」の楽しみ方

髪型が印象的な加瀬亮を演出中の監督 髪型が印象的な加瀬亮を演出中の監督 [拡大画像]

それでは、こうした謎と意味深なサインに満ちた「俺俺」を、三木作品初心者は一体どうやって楽しんでみるのがいいのか? 監督自身に「楽しみ方」を聞いてみた。

「もちろん、どんどん“俺”が増えていくストーリーや、亀梨和也の芝居を楽しむのもありだと思いますけど、これまでのファンが楽しんでいるようなモノを中心にする見方もいいですね。美術スタッフと本当に突き詰めて色んな仕掛けを施してありますから、『どんな意味があるんだ?』って、それこそ『ウォーリーをさがせ!』みたいに(笑)」

そして、先に述べた“接触”という意味で言えば、「高橋惠子さんはビンタするし、ふせえりは跳び蹴りしてるし、女性陣は大抵亀梨をのことを殴ってます」という注目の仕方もできる。

「大きなスクリーンで見てもらえれば、色々な発見があると思いますし、自分なりの物語が構築できると思います」


●「俺俺」を見れば、あなたの中の「俺」も必ず浮かび上がる!

「自分なりの答えを見つけてほしい」と監督 「自分なりの答えを見つけてほしい」と監督 [拡大画像]

なりゆきで“オレオレ詐欺”をしたことで、自分と同じ“俺”が増殖していくという「俺俺」のストーリーは、デジタル技術の発達と没個性化によって、誰もが別の人間に容易になりすませるという、現代社会の恐ろしさを浮き彫りにもする。増殖した“俺”たちによる互いの“削除”合戦の中で、主人公・均が生き残ろうともがく姿は、「自分が自分であること」を獲得するための戦いでもある。

「自分の確立って、インターネットだけに頼るんじゃなくて、自ら体験して、そこで見つけたことをメモしてその積み重ねから1本の線を見つけていくというか、そういうことなんじゃないでしょうか。異質な他者と接して初めて、自分が明確になっていくものだと思いますし。『俺俺』のどこに引っ掛かったか、どういう答えを見つけたのかでも、“あなたの中の俺”が浮き彫りになってくるんじゃないですかね。他人と話したりして、いかに自分と差異があるかを確認するのも面白いと思います」


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