劇場公開日 2013年3月22日

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「♪聖者になんてなれないよー だけど生きてる方がいい」ザ・マスター 蛇足軒瞬平太さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5♪聖者になんてなれないよー だけど生きてる方がいい

2017年4月25日
PCから投稿

幸せ

♪聖者になんてなれないよー だけど生きてる方がいい だから僕は唄うんだよー
精一杯デカイ声でー 見えない自由が欲しくてー・・・♪を思い出したー

911から12年、311から2年、いや、古今東西、
世界中で求められているスタンダードな題材の一つではないか?

様々な人が映画で小説で音楽で、
このスタンダードな命題をテーマに(その分量は1シークエンスだけのものもあれば、
全編に配置してるものも・・)どんなエンターテインメント要素をベースに、
観客を楽しませるか?を考えている。(もちろんエンタ要素皆無のモノも数多ある。)

例えば

<警官2人のバディで楽しませて人生を問う>
<ベースボールの作品で親子愛を問う>
<カウボーイやヒッチハイカーをベースに友情を描く>
<タイムスリップをして人類そのものの原罪を問う>

様々な方法を用いた名作があるが
本作は一対一の人間対トラ・・・失礼・・人間対人間!

マシンガンも日本刀もCGも不要、
素心、素手に素っ裸!マワシもチョンマゲもない。

生き方、思考、什麼生説波(そもさんせっぱ)だけで描き切る力技!

では、そもさんせっぱの中身は?

自己啓発的な事を行っている団体が舞台だ。新興宗教ともいえる。

その団体のリーダーである聖者(ただの人間)と、よっぱらいの新人(普通の人間)のお話し。

聖者はよっぱらいの本能的な感覚に揺さぶられ、よっぱらいは聖者の理性的な思考に
もんどり打つ。
団体の描き方もニュートラルなスタンスで、この2名への悪影響、良影響は最低限に留めて、
あからさまにカルト的扱いで糾弾するでもなく、不幸そうでもなく、ショッキングな事件を起こす事もなく、
必要以上には言及しない。
あくまでも、ただ(一見聖者)のオッサンと普通(一見よっぱらいで純粋)のやっぱりオッサンの関係だけで
観客をユサユサ揺さぶる。

ある人にとってはベストな説破の作品、
ある人にとってはタダタダ退屈な作品になってます。

とにかく、このスッポンポンの真剣勝負、
これこそがエンターテインメントの原点といっても過言ではない。
冒頭の揺らり、揺られる、船の美しさから始まって、
2人の葛藤、周囲の人間の戸惑い、団体自体の動揺の描写は必見!
くだらない解釈や、つまらないメタファー呼ばわりを揺るさない・・・程の美しさだった、ただただ見惚れた。

PTAさん、凡作マグノリアをセルフリメイクしたら、大傑作になる気配!

蛇足軒瞬平太