劇場公開日 2013年2月2日

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R-18文学賞 vol.1 自縄自縛の私 : インタビュー

2013年1月30日更新
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竹中直人が新ミューズ平田薫と紡いだチャーミングな女性のエロス

新潮社が主催する公募新人文学賞「女による女のためのR-18文学賞」受賞作を、竹中直人が3年ぶりにメガホンをとり、若手女優・平田薫を主演に迎え映画化。女性の“秘密”を描いた官能小説というひと癖ありそうな素材が、竹中ならではの繊細さとみずみずしい平田の魅力で、美しく優しい映像作品に仕上がった。(取材・文・写真/編集部)

女子大生時代に自らを縛り上げるという密かな楽しみを知った主人公の百合亜。社会人となり、仕事のストレスを解放する手段として一旦は封印していた自縛を再開する。そしてネットを通じて“運命の人”と出会い、百合亜は自縛の楽しみを更にエスカレートさせていく。

「あまりしゃべりすぎる女の子にしたくなかった」と竹中が話すように、比較的内向的な性格であるにもかかわらず、突如思いきった行動を取る百合亜というキャラクターを、平田の透明感ある美しさと凛(りん)とした佇まいが一層魅力的に見せている。男女関係や性的なシーンも含め、都会で働く20代女性の日常をスクリーンでナチュラルに体現する平田は、竹中作品の新ミューズといっても過言ではないだろう。

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竹中はキャスティングの経緯を「たくさん候補の方の写真を見せてもらったのですが、あまりピンとこなかったんです。そして、平田さんの写真を見てこの娘だ! と思い、そしてお会いして声を聞いた瞬間に、この音色だ! と。僕はけっこう声からキャスティングすることが多いので、顔を見ても声がいまいちだとダメだったりすることもあるんです。でも平田さんは佇まいも含めて、声が決め手でしたね」と明かす。

百合亜と共通する部分を自分自身の中には発見できなかったと平田はいうが、あたたかく平田を迎え入れた竹中やスタッフに身をゆだね、スムーズに役に入ることができた。「こんなにリラックスして撮影に入れたことは初めてで、現場で、フラットでいられることの心地よさを教えていただきました。監督やスタッフを信じて、ただそこにいる。精神的にも強くなれたなって思います。だから、百合亜の気持ちがわからないとか、困ったことはなかったんです」。

本編での見どころの一つは、百合亜が自宅で自縛を楽しむ長回しのシーン。平田は1カ月半に渡り、自縛の練習を積み重ね「一発で成功させたいと思っていたので、一心不乱です。カットがかかった後は撮影したことを覚えていないぐらいでした」というほどの集中力で臨んだ。竹中も「一発ですよ。完璧に自縄自縛でした!」と太鼓判を押す。官能的でありながら、俗悪さを一切感じさせない美しい仕上がりとなっている。

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挿入画として、平尾香氏のイラストを用いたり、クスッと笑える小道具など竹中らしいユーモラスな演出も光る。また、安藤政信、「ピース」綾部祐二津田寛治をはじめとした個性的な共演陣が演じるそれぞれのキャラクターも魅力的だ。「人生を説教するような映画にはしたくなかった。変な人ばっかり出ている映画が好きなんです。僕は役者を脇役、主役と分けてとらえることはしません。一人ひとりが主役だと思っています。せっかく出演しているのですから、出ている人全員に目立ってほしいし、地味な俳優になってほしくない」と、自身も個性派俳優として活躍する竹中らしい持論を述べる。

本作で女優として大きな飛躍を遂げた平田独特の存在感を竹中は高く評価する。「普通の俳優さんはどうしても演じようとしてしまいますが、彼女はただそこにいて、表現せずして表現するというのを本能的にできる人なんじゃないかと思います。いちいち起こしていかなくても感情を起こしていくことができる。僕にとってそれが一番理想的な演技ですね。今後どんな作品と出合うのかも大事ですが、つまらない仕事をやることも大事。そこから見えてくることもたくさんありますから、だから楽しいんです。僕も今後が楽しみなジジイになりたいです」

「ひとり自宅でとめどなくお酒を飲んでしまうことがあります。次の日のことを考えないで、飲めるのがとても精神的にも気持ちいいんです(笑)」と、1人で楽しむ秘密をこっそり明かしてくれた平田。「明るく前向きなパワーのある映画で、働いている女性にはすごく共感してもらえると思います。いろんなフラストレーションを抱えていたら、この映画を見ると少しすっきりしていただけるかもしれません」と清々しい笑顔でアピールした。

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