踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望 : インタビュー

青島イズムとは？

織田が15年間にわたり演じ続けてきた、青島俊作。コンピュータシステムの開発会社でNo.1の成績を残した元営業マンで、刑事ドラマの刑事にあこがれて警察官に転職した変り種だ。市民の安全を第一に考え自らの信念に従って行動するため、組織内のかばい合いや官僚主義を嫌悪し、指揮系統からはみ出して単独行動に出ることもしばしば。亀山氏は、「青島って組織にいながら自由に意見を言い、正義を貫く。ただ、それをベラベラとしゃべるやつでもない。つまり、仕事に対する責任感が全てなんですよ。警察官の最後の姿勢って何かと言えば、一般市民を守るために自らの正義感、責任感を100％まっとうすることなんじゃないかな。今回は、青島イズムみたいなところを、最後きっちりとお見せしますよ。青島君の言葉で言わせますが、それを全編通じて見せたいんです」

今作の劇中、室井が青島の部下たちに語りかけるシーンがある。「彼の背中を見ていろ」。亀山氏は、君塚の執筆した脚本を見て「これだ、これです」と口にしたそうで、「責任感って口で言うんじゃなくて先輩が背中を見せるしかないんですよね。部下や後輩が『またやるんですか？』と不平を口にしたときに、『いいからやるんだよ』と言って背中を見せる。東日本大震災のときに見せた自衛官の背中は、まさにそうでしたね。最初に現場に入って、ガレキの山の中を越えていく。ファイナルの劇中、青島が背中を見せる印象的なカットがありますが、それが青島イズムの継承なんです」と語気を強める。

完結編「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」は、警察が押収した拳銃を使った連続殺人事件が発生し、捜査の過程で青島にある嫌疑がかけられ辞職勧告がくだされる。さらに、室井までもが組織の大きなうねりにのみ込まれ、職を解かれようとしていた。それでも懸命に捜査を続けるなか、それをあざ笑うかのように真下（ユースケ・サンタマリア）の息子が誘拐される。

青島は、今作でいわれのない嫌疑をかけられ、警察官という天職ともいえる職を奪われそうになる。思えば、シリーズ放送開始当初から、警察官であるがゆえに感じる無念さを青島たちは感じてきたといえる。そのたびに、彼らは気持ちを持ち直らせて立ち上がってきた。それが何かといえば、「ただただ仕事に対する責任感でしかないんじゃないでしょうか。結局、そこに戻っていくんですよね。織田君やキャストの皆ともきわめていい話し合いの機会が持てたし、青島イズム＝『踊る』のテーマだと思うし、それを検証できたことはものすごく意味があった気がします。ファイナルにふさわしいかといえば、『毎回やってるじゃないか！』と言われたらそれまでなんですが、もう一度あえて自分たちで検証するのには、良い機会でしたね」

今後のフジテレビの映画戦略やいかに

「踊る大捜査線」という超優良コンテンツが幕を引くが、亀山氏には「“フランチャイズムービー”を2本か3本はシリーズものとして持っていたい」という構想がある。「まったくないところから生み出す必要はないわけです。それがあることによって、看板がひとつかふたつはできる。その間に新たな才能を育てなければならない。そして、ブランド作りですよね。この人の新作だったら見てみたい。これは、通常とは別の意味でのフランチャイズです」と熱を込める。

ブランド作りの最たる例として、三谷幸喜の名を挙げる。「三谷さんはシリーズものは作らないけれど、今度は“お化け”らしい、次は“時代劇”みたいだ……っていうことでブランド作りができる。矢口史靖さんもそうですよね。次は何をやるんだろうと仕向けていくこともできるし、うちのハウスのディレクター、社内のディレクターを使う手段もある。本広や羽住英一郎はそれに準じていますよね。それに、武内英樹（「テルマエ・ロマエ」「のだめカンタービレ」）や西谷弘（「任侠ヘルパー」「容疑者Xの献身」）といった才能が育っている。彼らが次に何を見せていくのか。そういうローテーションをうまく回しながら、どうやって次の芽を育てていくかも考えていかなければなりません」

そしてまた、コメディというジャンルの重要性も説く。「やはりコメディというものを作らせると、テレビで訓練されているので、テレビ出身の監督は上手なんですよね。いまのご時世、コメディは映画に最も必要かもしれませんね。アクション、サスペンス、ホラーではないジャンルを確立させるのも重要です。いろいろなことを戦略的に考えていますから、今後も年間10本前後のラインナップは続けていくつもりです。今年みたいにヒット作に恵まれる年かどうかはわかりませんが、やり続けないと。そういう意味では、僕が背中を見せなくてはいけない時代だと思っています」

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