劇場公開日 2012年2月4日

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タンタンと私のレビュー・感想・評価

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4.0タンタンの作者エルジェの内面をも解き明かす興味深いドキュメンタリー映画だ。

2012年2月18日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

スピルバーグ監督の下、フルCG映画化されたばかりの人気コミックのタンタン。
イラストでは見たことはあったものの漫画は読んだことはなかった。日本ではポップアートとしての評価も高く、漫画家の江口寿史さんなどが影響を受けたという。
この映画で知ったのは、ベルギー人の作者エルジェはヨーロッパなどでは度々テレビに出たり私生活も注目される、日本での手塚治虫氏のような巨匠だったということ。そして、タンタンが生まれたのは、なんと1929年。手塚治虫氏よりも早く、日本では「のらくろ」あたりと同じ時代だったということ。
今見ても全く古さを感じさせないポップでカラフルな絵柄。コマ割りこそ日本漫画のような奇抜さがないものの、1コマの中にストップモーションのような動きを描き込むなど映画的な工夫もされ、後の漫画家たちに大きな影響を与えたという。さらに自らはアイデアを出し、スタッフを使って漫画を作るのを分業化するスタジオ形式もいち早く取り入れていたすごい人だった。

この映画は、オステルガルド監督が入手したあるカセットテープを素材に作られた。エルジェが気まぐれで応じた学生とのインタビューテープ、プライベートなこと心の内面など、後になって喋りすぎたと30年間封印されていたものだった。
少年探偵タンタンのキャラは、ボーイスカウト活動をしていたエルジェの理想像として描かれたが、作者が年をとるとともに飲んだくれだがタンタンのよき理解者である中年男ハボック船長の方に自身を投影していったという。
長年理想の夫婦像に呪縛されていたこと、秘書の若い女性との不倫(後に妻と離婚し再婚)などカトリック信仰の厚かったエルジェの苦悩も明かされる。
タンタンの作者エルジェの内面をも解き明かす興味深いドキュメンタリー映画だ。

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