がんばっぺ フラガール! フクシマに生きる。彼女たちのいま : インタビュー

2011年11月2日更新
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フラガール&小林正樹監督が“体現”する福島のいま

東北有数のリゾート施設、スパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)のダンシングチーム・フラガールが、営業を再開した10月1日、約7カ月ぶりに“本拠地”のステージに立った。東日本大震災とその1カ月後の直下型地震で甚大な被害を受けたハワイアンズの休業中、彼女たちは日本に笑顔と元気を届けようと46年ぶりとなる全国キャラバンを敢行。小林正樹監督がその姿を追ったドキュメンタリーが、「がんばっぺ フラガール! フクシマに生きる。彼女たちのいま」だ。カメラを向けられたリーダーのマルヒア由佳理、サブリーダーの大森梨江らが語る言葉からは、地震、津波以上に原発問題が重くのしかかる福島の今、そして営業再開は復興への端緒にすぎないという思いが、ひしひしと伝わってきた。(取材・文・撮影/鈴木元)

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度重なる地震によって、再開のめどが立たず休業に追い込まれたハワイアンズ。そんな中、フラガールたちは同月22日に練習を再開させる。驚くべきは、同月末で退団する1人を含め、29人全員がそろったことだ。

マルヒア「メンバーの気持ちは全然前に向いていなかった。それは皆の表情を見て分かりました。間近まで避難していた人もたくさんいて、それぞれがいろいろな思いを抱えているはずですが、1人も欠けることなく戻ってきてくれたことを第一に考え、集まったときだけでも震災のことは忘れて、楽しくやろうよと声をかけました」

大森「レッスンが再開するという連絡がきたときには、少し先が見えたような感じでしたけれど、震災プラス原発の問題があって、正直諦めていた部分もありました。でもレッスンが始まると、新しいスタートだと自分の中で切り替えることができて、自分たちはここから進むしかない、やるべきことをやっていくしかないと思いました」

「全国きずなキャラバン」は5月3~5日、いわき市の避難所への慰問からスタート。前身の常磐ハワイアンセンターのオープン前に宣伝のために行われて以来、46年ぶりの復活。2人は「いろいろなものを失い営業もできない状況で、私たちがフラガールとして人の前で踊る機会を与えてもらったことにすごく感謝しました」と声をそろえる。

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一方、映画「フラガール」のメイキング番組や、実際のハワイアンズのポリネシアンショーを撮影したDVD「真実のフラガール」を手がけた小林監督は、「震災を体験し、メディアの人間として何かを表現する義務があると思っていた」と語る。そして、現地を視察した際に方向性が見えてきたという。

小林「震災から2~3カ月たっていましたが、とにかくひどい状態で相当大変なことだと思いました。でも印象的だったのが、被災現場を案内してくれた人たちが皆前向きなんですよ。自分に置き換えてみたらこんなに明るくいられるだろうか、それはもともといわきの人が持つ気質からくるのだろうかと、感動したんです。震災を扱ったドキュメンタリーは非常にヘビーで暗いものが多い。それで、僕に託されている使命は前向きなものを発信するべきだと思ったんです」

映画は、小林監督がフラガールやハワイアンズ関係者へのインタビューを軸に構成されているが、回答を受けて「へえ、そうなんですか」「すごいな、これは」といった監督自身の言葉も重ねられている。これは今までのドキュメンタリーにはあまり見られなかった手法で斬新だ。これは、クランクインが7月に入ってからで、すでにキャラバンが始まって2カ月が過ぎていたことに起因している。

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インタビュー2 ~フラガール&小林正樹監督が“体現”する福島のいま(2/2)
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