劇場公開日 2012年6月9日

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道 白磁の人 : インタビュー

2012年6月5日更新
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「道」は日本映画だが、撮影現場では高橋伴明監督以外、主要スタッフのほとんどが韓国人で占められた。吉沢によれば、2人のコミュニケーションは英語で、撮影も韓国語が分からないこと以外はほとんど違和感もなく韓国への親近感も増したそうだ。

吉沢「スビンさんの話で面白かったのが、日本人は本音と建前がある2フェイス、中国人はいっぱい顔を持っている。韓国人は1フェイスだから、いいことも悪いことも言ってしまうということ。すごく分かりやすくて、だから入り込めばウソも本当もないので現場はとてもいやすかった」
ペ・スビン「何のためらいもなくしゃべるから、よくケンカもするんですよ(笑)。けれど、それが本当に親しくなるきっかけにもなるし、力を合わせるエネルギーにもつながる。吉沢さんとは率直に心を開いて話したからこそ、すばらしい友情が生まれたんだと思います」

実際、撮影の合間にはよく釣りにも行った。その陰には、スビンが「最高でした」と最大級の賛辞をおくる高橋監督の“配慮”があった!?

ペ・スビン「とにかく撮影がスピーディ。準備には徹底して時間をかけるけれど、いざ撮影に入ると本当に速い。重要なものが何かを分かっている様子で、それによって僕たちが共に過ごす時間をたくさんつくってくれた。釣りをする時間もね(笑)。監督は、僕たち2人が本当に親しくなることを望んでいらっしゃったようです」

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ほとんどの日本人が朝鮮人を蔑視する中、巧は分け隔てることなく接しチョンリムと友情をはぐくむ。チョンリムが抗日運動による容疑で逮捕され、自らが病魔に犯されても巧の心はぶれない。まさに刎頚(ふんけい)の友。この関係性が、お互いを立て合う吉沢とスビンにだぶる。吉沢が山梨でクランクアップする際、既に撮影を終えていたスビンが韓国から駆けつけたことにも2人の信頼関係が表れている。

吉沢「活動している国、場所が違うので当分会えなくなるなあという寂しさはあったんですけれど、わざわざ来てくれたんですよ。それだけの人間関係がはぐくめる現場も人生の中でなかなかないので、すごく名残惜しい感じはしました。まあ、それから4カ月くらいは月に1回ずつくらいは会えたんですけれどね(笑)」
スビン「監督が、撮影が終わるときを全員で過ごしたいとおっしゃったので、じゃあ行きますということになりました。そういう人間関係によって、この映画がもっと意味を持つようになった気がします。おかげで山梨を観光することもできました」

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撮影後も、スビンが吉沢の舞台「オーデュポンの祈り」を観劇したり、お好み焼きを食べに行ったりとさらに交流を深めている。その過程で吉沢は、ウォン・カーウァイ監督の推薦で中国に渡り北京映画学校で学んだ経験を持つスビンに大きな刺激を受けた。

吉沢「韓国の俳優というより、アジアの俳優という意識が高いと思ったんです。日本でも渡辺謙さんや浅野忠信さんが大活躍されていて、グローバルな意識があってすごいなあとは思っていたんですけれど、スビンさんと役や役者人生の話していても広い視野で見ているなとすごく感じました。そういう部分で意識の変化はありましたね」

これにはスビンも同意し、共演者としての再会を切望した。

スビン「自分がどこの国、場所で俳優をしているということはあまり関係がないと、この映画で確認することができた。今の時代は自分の国だけでやっていればいいわけではなく、もっと意識を世界に広げていく必要があると思います。僕も頑張って与えられた場所でベストを尽くせば、また吉沢さんと会う機会に恵まれるはずです」

退室際、吉沢に「逃亡くそたわけ 21才の夏」以来5年ぶりの映画主演だと向けると、「映画はいいですよねえ」と満面の笑みを見せた。それだけ映画への強い思い入れがあるのだろう。この気概があれば、世界に向けて発信する作品でスビンと共演という将来プランも現実味を帯びるかもしれない。

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