劇場公開日 2012年10月6日

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アウトレイジ ビヨンド : インタビュー

2012年10月3日更新
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三浦は2作を通して、それまでのイメージを完全に払しょくした感がある。06年の「松ヶ根乱射事件」あたりからだろうか、役の幅が広がり渋みがどんどんと増している印象がある。北野監督も認めるところで、加藤を頂点とした山王会の“組織図”には自信を見せる。

「三浦さんは、青春スターのイメージがあったけれど、ここ何年かは吹っ切れちゃって、失礼ながらああ、いい役者になったなあと思うよ。『伊豆の踊子』のときは悪い役者って意味じゃなくて、うまく変わっていったのは意外に珍しいタイプかもしれない。普通、三浦さんをやくざの頭や会長には使わないと思うから、他の監督はあっ、やられたと思ったはずだよ。ただの切った張っただけじゃなくて、国や金融といったところでのし上がっていく現代やくざとして面白いなと思った。で、加瀬くんがいて中尾(彬)さんたちが古参の幹部でいらついていてというのは、役者の配分としては見事な構図だと思ったね。だって、中尾さんが親分だったらコッテコテでしょう」

爆笑するとともに、なるほど、と思わず心の中で快さいを叫んでしまった。では、「人の評価は自分の中では分からない」という三浦は、監督としての北野武をどのように見ていたのだろうか。

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「1本目は、さすがにとまどいましたけれど、今回は少し慣れたかな。それでも、緊張する現場なんですけれどね。共演シーンはほとんどありませんでしたが、やはり演じる側の気持ちをすごく理解していらっしゃるので、最初から芝居をしやすい状態をつくってもらえているんですね。ロケ現場にしても、屋外でも屋内でもすべて。そういうことが一番大事だと思っているので、とてもありがたかったです」

一方で、演出面ではこれまでの北野映画にはなかったアップ、切り返しが多用されている。ののしり合いでの迫力や緊張感を出す効果があるのはもちろん、シネマスコープのスクリーンの奥行きなどが十分に生かされている。

「基本的にセリフが増えると、当然カット割が増えるじゃない。だから、カメラマン(柳島克己氏)と約束したのは、とにかく動こうと。ところが映像的にはいいんだけれど、俺って編集でごまかすのに、ごまかせなくなっちゃったの(苦笑)。カットして、引き画(え)とつなごうと思ったら寄っちゃっていてどうしようということがよくあった。中尾さんたちがワインを飲んでいるシーンでは、もうグルグル(カメラを)回しちゃって、何が何だか分からなくなっちゃった」

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だが、それも東日本大震災で撮影が1年延期され、脚本をあらためて推敲したことでもたらされた成果といえるかもしれない。

「撮影が延期になった間に台本を見直そうって思って、結果的によくなったと思うよ。初めはこれほど緻密じゃなかったからね。エンディングも当初とは変わっていて、今考えてみたら一番いい終わり方をしているかな。あとはセリフもかなり増えている。あんまりセリフをつけるのは嫌いなんだけれど、ここんとこのテレビなんか見ると、字を読ませたいのかって思うくらい丁寧なテロップをつけている番組が多い。お笑い番組で、『なんだバカ野郎、ワハハ』って読んでから笑うのかなあと思ったとき、俺の映画は不親切だなあと思って。じゃあ、セリフくらいはちゃんと書こうってなった」

自ちょう気味な語り口だが、しっかりと現在のテレビに対する毒舌も含まれているあたりはさすが。常に「最高傑作は次回作」と言ってはばからない北野監督が、続編という新たな挑戦で放つ極上の群像エンタテインメント。スクリーンにくぎ付けになるのは間違いない。

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