劇場公開日 2012年1月28日

麒麟の翼 劇場版・新参者 : インタビュー

2012年1月27日更新
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四半世紀に及ぶキャリアを誇る阿部だが、実は続編、シリーズものへの出演はほとんどない。唯一、03年からドラマ、映画で続く「トリック」シリーズの上田次郎くらいだ。今回が3度目となる加賀役に挑んだ背景には、どのような思いがあるのだろうか。

阿部「刑事は人間が深くて、あまり内面を見せない。先輩からも刑事役は時間がかかると聞いていたから、そういう意味では成長していく可能性を感じているんです。刑事はいろいろな人物と接していく。そのなかで、加賀恭一郎という人物を徐々に発見している感じです。もっと時間がたって、また挑むことができたら自分や加賀の成長を加えられるでしょうね」

対する溝端は、原作シリーズではほとんど登場していなかった松宮とどう向き合い、加賀に対じしていったのか。設定的には2人はいとこ同士で、加賀が所轄、松宮が警視庁捜査一課のキャリアという微妙な立場だが…。

溝端「阿部さんに胸を借りるつもりで向かっていく。尊敬しているし、信頼もしているので、思い切り自分の持っているものをぶつけようみたいな。小細工をしても通用しないし、やっても意味がない。それを阿部さんがすべて受けてくださるので。でも、『麒麟の翼』ではまだ臆病だったなと思うくらいです。共演して毎回、いつか阿部さんをびびらせてやろうと思っているので、4回目があった時には今まで以上に勝負したいですね」

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これには阿部も満足げな笑顔を見せる。溝端の成長を認めているからこそだ。こうして生まれた2人のやり取りは実にテンポが良く、特にポーカーフェイスで鳴らし感情や行動を読ませないことにたけている加賀に、松宮が必死で食らいついていこうとする姿はすがすがしい。一方で、捜査会議中に加賀が孫の手で松宮の背中をくすぐって発言をさせるといったコミカルなカットには、思わず吹き出してしまう。

阿部「そういうのは、つくろうと思えばいくらでもできる。そういったチャンスを台本に書いてくださるし、今回は原作に忠実にやっていこうというのがあったけれど、すき間があればいくらでも出せる」
溝端「次回作があるなら、事件が起きる前に2人のボケッとした日常の捜査みたいなものもやってみたいですね」
阿部「溝端は、他の作品でクールな役もやっていて幅があるから、成長してそういった部分を少し松宮で出せば。またそれが加賀にとっては格好のいじり材料になる」
溝端「ハハハハハハ。負ける加賀も面白いし、負ける松宮も面白い。なんかこの関係性ってすごく可能性が…」
阿部「あるね、実は。刑事ドラマだから、いろいろな人間を描ける。それは強みだな」

なんとも楽しく、気心が知れていることがうかがえる会話風景だ。芝居を重ねて構築された2人の関係性が、「麒麟の翼」の世界観を決定付けているといっても過言ではない。そんな中、クールな加賀が初めて感情をあらわにして激こうするシーンが強烈なインパクトで迫る。相手役の劇団ひとりは、その日が撮影初日だったことで思わぬエピソードが生まれたという。

阿部「『劇団ひとりさんです』と現場で紹介されて、いきなり加賀に胸倉をつかまれ、すごまれるシーンだった。ひとりさんの泣くギャグがあるじゃないですか。あれをやってくれるんじゃないかと思って、ちょっと集中できなかった(笑)」
溝端「僕、(ひとりが撮影初日とは)知らなかったんですよ。でも、2人の関係性がすごくいいバランスで出ている感じがしました」

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すかさずフォローを入れるあたりは、“弟キャラ”を自任している溝端だからこその気配りだろう。その彼にも格好の見せ場が用意されている。地下鉄の線路内に落ちた人を助けるため、ホームの非常ベルをジャンプして押し、その勢いでホームから飛び降りるアクション。当然、運行時間外での撮影になるため、本番は午前3~4時となる。

溝端「一歩間違えれば大けがをするので、それだけは絶対に避けなければいけなかった。でも本番はもう、体がどうなってもいいやという気持ちで走りましたけれどね(苦笑)」

これまで2人は、随所で「また挑むことができたら」「4回目がある時には」といった、次回作以降に期待を抱かせる発言をしてきた。もちろん、「麒麟の翼」の評価やそれに伴う製作サイドの意向などさまざまな要素が絡むが、原作シリーズから読み続けているファン、ドラマから見始めて魅了されたファンを問わず、加賀を愛する多くのファンも同じ思いを抱いているだろう。

阿部「一概には言えないけれど、シリーズはたくさんあるので2時間ドラマでもいいので、またやれたらとは思います。その時は、ここまできたら松宮とちゃんと絡んでいる作品をやりたいですね」
溝腹「マジっすかあ!? うっれしい~。これ、めっちゃでっかく書いてください。阿部さんが松宮とやりたいって。本当にうれしいですね」

快さいを叫び、身を乗り出してアピールしてもらったが、字の大きさは変えられないで申し訳ない。だが、「麒麟の翼」はバディ・ムービーとしても極めて高いレベルで成立している。静の加賀と動の松宮、2人が織り成すコントラストがさらに輝きを増し、次はいかなる難事件に挑むのか、興味は尽きない。

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