劇場公開日 2011年10月15日

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一命 : インタビュー

2011年10月14日更新
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「すごくストイックで厳しい現場と思っていたら、もちろん三池監督は自分に厳しい方ですけれど、本当にユーモアがあって一言で気分を楽にさせてくれる父性のようなものを感じました。信頼して、ゆだねてもいいんだという気分にさせてくれる。現場の緊張感はあるけれど監督の一言でスタッフに笑いが起きることもあって、すごく悲しい話なのに監督が現場を楽しんでいる。ただ雨が降っているシーンでも、『雨粒3つ増やして』とか。それに、どう演じてくれるのかという投げかけがずっとあったんですよ。怖いところではあるけれど、やりがいがあると感じていました」

それゆえに自らの思いも積極的に進言した。それが生かされたのが、求女にとってのクライマックスとなる竹光での切腹シーンだ。

「台本のト書きに血迷ったという言葉があって、その状態をどう出せばいいのか自分なりに感じたことを監督に話しました。時代劇なので伝統や歴史などをしっかりと解釈したうえで演じなくてはいけないとは思うんですけれど、それ以上にあの場で腹を切れといわれたら、家族を守らなくてはいけないのでそれどころじゃないなという、今の時代に生きている僕なりの解釈で演じてみたいという気持ちですね。それが現代の人に何か伝わるんじゃないかと。監督もそれでいいんじゃないかと飲んでくれたんです」

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何度も何度も腹に突き立てた竹光から血がしたたり、徐々に白装束が赤くにじんでいく光景は壮絶の一語(もちろん飛び出してはこない)。カットを細かく割り、2日をかけて撮ったというだけあって、痛さが尋常ではないことが伝わってくるとともに家族を守れなかった塊根の念がにじむ。だが、本人は反省することしきりだ。

「あのシーンで伝えたいことは、ただの痛みだけでは良くないというのがあって、でも自分で見たときに痛みしか伝わらないのでは、表現方法としても自分の気持ちとしても、もっと葛藤みたいなものが出せたらという反省点があります。撮影のときは本当に求女同様、混乱していたというか血迷った状態だったので、客観性が失われてしまった感じがありました」

いやいや、それはあまりに自分に厳しすぎるのではないだろうか。だが、そういった負の要素も素直にさらけ出せるところが、瑛太を魅力ある俳優にしているのかもしれない。「ちょっと難しくて分からないですね」「(答えるのに)1時間くらいもらっていいですか?」…インタビュー中、胸のうちをいかに自分の言葉で表現するのかしゅん巡している姿勢も好感が持て、適切な言葉を考えている間でさえ心地よかった。

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それほど、「一命」に懸けた思いが強いのだろう。時代劇は2008年の大河ドラマ「篤姫」以来2度目で、映画は初めてだが、時代劇にはかねて相当な思い入れがあったようだ。

「時代劇でしか伝えられないことは絶対にあると思っていて、俳優としても時代劇で着物とカツラをつけてちゃんと立っていなければいけない、生涯俳優を続けていく限り、時代劇で俳優として伝えられないとダメだなと。武士としてメンタルな部分でしっかりと強いものを持って演じられる俳優でありたい。そういう意味で今後も大事にやっていきたいという思いはすごくあります」

その意味で「一命」に出演し、カンヌで世界を体験したことは大きな財産になっただろう。

「日本映画の中でも特別な『切腹』と同じ原作を別のアプローチで映画化した作品で、しかも、日本で初めての3Dでの時代劇に携われたことは、俳優人生においてすごく大きなものになりました」

今後も「ワイルド7」「僕達急行 A列車で行こう」とジャンルの違う主演映画の公開が続く。日本映画の今、そして未来を担うことは間違いない。なんとも頼もしい限りだ。

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