劇場公開日 2011年10月29日

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「恋する悦びがみなぎるラブロマンス作品」ゲーテの恋 君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0恋する悦びがみなぎるラブロマンス作品

2011年11月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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まず画が綺麗だ。泥道を人々が、動物までもが行き交う町の風情、そして四季折々の色に染まる草原が美しい。
セットと衣装が丁寧で、小道具も行き届き、画面から人々の営みの香りが漂ってくる。
躍動感と流麗さを併せ持った音楽が画面によく合う。

本篇はというと、文豪ゲーテの失恋物語なのだが、決して暗くはない。若さ溢れ自由奔放なゲーテの心がひとりの女性シャルロッテに惹かれていく。恋に真剣で、失恋の痛手に死を選択するほど情熱的なゲーテだからこそ、愛の言葉がほとばしるように湧き出てくる。紡がれた言葉の美しさに、ゲーテの才能を見抜いたのは、ほかならぬシャルロッテだ。
シャルロッテがいなければゲーテの才能は開かず、彼女との失恋がなければ「若きウェルテルの悩み」は誕生しなかった。

貧しい家計を支えるため、ほかの男性を選ばなければならないシャルロッテにとってもゲーテにとっても試練のステップだった。そんな人生の岐路を、失恋物語としてではなく、恋する悦びがみなぎるラブロマンス作品に仕上げたところに好感が持てる。

背の高いアレクサンダー・フェーリングが画面によく映え、ミリアム・シュタインの知的な美しさも魅力的だ。

二人の関係に気付きつつもシャルロッテへの思いを断ち切れないゲーテの上司、 ケストナー参事官もまた恋に純粋だったと言える。
部下には意地悪い厳しさを見せる一方、恋する女性に一途な愛を捧げるケストナーを、「ミケランジェロの暗号」のモーリッツ・ブライブトロイが好演する。

ゲーテが弁護士になることしか臨んでいなかった厳しい父親が、ゲーテの才能を知ることになるラスト。やはり人の親だなーと、つくづく微笑ましい。

ゲーテとシャルロッテがデュエットするED曲もいい。

1774年に発表され、いまなお読み継がれている恋愛小説「若きウェルテルの悩み」。200年以上経っても、ゲーテと、彼に対するシャルロッテの変わらない想いが、こうして映画になって語り継がれる。すごいことだ。

この作品、前書きと後書きがあるが、ここに翻訳の字幕は入らず、その後のカットになってから入る。私には何を書いてあるのか読めないが、素人目に見ても流麗で美しい文字で書かれた画面だ。ここに翻訳の字幕を重ねて台無しにしない配慮を感じた。

マスター@だんだん