劇場公開日 2012年2月11日

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はやぶさ 遥かなる帰還 : インタビュー

2012年2月6日更新
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はやぶさは地球を目前にして、4基あるイオンエンジンが1基だけを残して機能停止に陥ってしまう。そのとき藤中は、実験を行ったことのないギャンブルともいえる解決策を山口に提案するが、同じイオンエンジン担当でNEC社員の森内(吉岡秀隆)の猛反対を受ける。大学の先輩後輩の間柄で、二人三脚で開発に取り組んできた盟友の2人が感情をぶつけ合うシーンが大きな見せ場となっている。

「吉岡くんの役は、民間企業のサラリーマン的な立場というしがらみを抱えている。こっちは、そういうことを全然考えないような言葉も吐いたりする。ドラマ全体の中で人間同士がぶつかるのもあのシーンだけだったので、そこは劇映画として強めに熱くやりました。監督もギリギリまで悩んでいて、『イオンエンジンを試したいんだ』というセリフが最後に足されたけれど、究極はそこなんだろうと。国中さんにも、はやぶさを成功させてイオンエンジンを世界に売り出したいという壮大なプロジェクトがあると思うんです。だから逆に言えば、それを試すチャンスはここしかないという感じだったんでしょうね」

そして、イトカワのサンプルが入ったカプセルは2010年6月13日、地球に帰還する。藤中は、落下地点であるオーストラリア・ウーメラ砂漠でのカプセル回収の指揮を託される。製作サイドは、実際に落ちた地点での撮影にこだわったという。日本の宇宙開発史上に残る現場に立ったことでの感慨はあったのだろうか。

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「オーストラリアに着いてからいろいろと乗り換えて、さらに車で7時間くらいかかる。真っ赤な砂漠をずっと走っていくんです。この辺でもいいんじゃないかって話したんだけれど(笑)、実際に落ちた地点は教授たちが計算した所から数メートルしか変わらなかったらしい。これは奇跡としか言いようがないというか計り知れないですよね。映画作りや俳優の仕事は、どこかで計算外のところにいこうとしたり、芝居も自分の予知できないところを目指していく。でも、はやぶさのチームは計算、図式の中でこれだという答えをばっちり出している。同じ人間業とは思えなかったですね」

藤中同様、さまざま挑戦をして完成した「はやぶさ 遥かなる帰還」は、見事なまでの群像ドラマとして日本の技術者、科学者たちが生み出した奇跡と軌跡を凝縮して伝えている。江口も出来に関しては、満足そうな笑みを浮かべた。

「台本を数段超えていますし、予想していたよりも群像ドラマとして夢、希望がある。エンディングが分かっているのにここまで興奮するというのは、事実がすごく熱がこもったものであり、精神的に強い人たちの集まりだったんだなと思います」

冷静に自分を見つめながらも、時折、熱を感じさせる話しぶりに江口の魅力の一端を見た思いがした。周囲をひきつけるオーラは、「はやぶさ」の経験を経てさらに輝きを増すはずだ。

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