もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら : インタビュー

2011年5月30日更新

元ギャル社長・藤田志穂が映画「もしドラ」の見どころを語る

昨年から社会現象となっている“もしドラ”こと「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」。タイトル通り、女子高生とドラッカーという異色の組み合わせで話題を呼んだ本作は、アニメ、マンガ化に続き、「AKB48」の前田敦子主演で映画化され、6月4日に公開される。一足早くこの話題作を鑑賞した“ノギャル”こと元ギャル社長の藤田志穂氏が、自身の経験と重ね合わせて見どころを語る。

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原作は09年にダイヤモンド社から発売。著者の岩崎夏海氏は秋元康氏に師事した放送作家で、今や日本を代表する人気アイドルグループ「AKB48」のプロデュースも手がけた。

主人公は進学校の野球部でマネジャーを務めることになった女子高生の川島みなみ。甲子園を目指すためチームを変革したいみなみは、マネージャー業の参考にと経営学の父・ピーター・ドラッカーの名著「マネジメント」を間違って買ってしまう。最初は内容が難しくて後悔するが、その理論は野球部のマネジメントにも生かせることに気付き、部員とともに日々の練習で実践していく……。青春小説仕立てのビジネス本というユニークな形態で多くの反響を集め、これまでに250万部以上を売り上げている。

1974年に刊行された「マネジメント 課題、責任、実践」は、ドラッカーが発表してきた経営論を体系化したもので、マネジメントの仕事を規定し、果たすべき使命と責任、取り組むべき仕事と役割、目指すべき戦略について具体的に解説する。みなみは同書のエッセンスを初心者向けにまとめたエッセンシャル版(ダイヤモンド社刊)を手に、甲子園に向かって奮闘する。

マネジメントはお手の物!? 元ギャル社長が映画「もしドラ」を見たら……

「起業した19歳のころの自分を見ているよう」

ふじたしほ 1985年生まれ。 ギャル革命を掲げ19歳で起業し、 ギャルの良いところを生かしたマーケティング会社 シホ有限会社G-Revoを設立。
ふじたしほ 1985年生まれ。 ギャル革命を掲げ19歳で起業し、 ギャルの良いところを生かしたマーケティング会社 シホ有限会社G-Revoを設立。

主人公のみなみと、19歳でギャル革命を掲げ会社を起こそうとしていたころの自分がかぶりました。「野球部を甲子園に連れて行く」と、みなみが言った一言に対して快く賛成する人がほとんどいないという始まりも、「ギャルに会社なんてつくれるわけがない」と、頭ごなしに反対され笑われたときの記憶がよみがえり、その悔しさがバネになり“本屋へ行く”という行動も私と一緒でした。ただ、私の場合、そのとき“会社をつくる”ということで頭がいっぱいだったので、残念ながらドラッカーの本には出合えませんでしたが(笑)。

でも「マネージャーになる」ということで頭がいっぱいのみなみが、ドラッカーの「マネジメント」に出合い、ヒントを得て、それをとにかく実践するという姿は、まるで19歳のころの自分を見ているようでした。ある意味、何も知らないからこそ素直に受け止められることも多かったのだと思います。

そして、みなみが「マネージャーになる」「甲子園に連れていく」という思いが強かったからこそ、ドラッカーの経営や企業理念のマネジメントから、一見、関係のなさそうな野球部とつなげることができたのだと思います。本当にキッカケはどこに落ちているかわかりません。強くブレないものがあるからこそ、今までと違った視点で見ることができ、考えることが出来るんだなと改めて感じました。

会社でも、野球部でも、何をするにしても人は1人じゃ出来ることは限られます。だからグループや組織の輪があって、支えてくれる仲間たちとその中で生きています。マネジメントはそんな人間関係を円滑にしながら組織・団体での効果、効率を最大限に発揮するために必要なこと。マネージャーを目指している人や経営者を目指している人に限らず、今の環境を良くしたい、自分自身をもっと変えたいと思っている人にもオススメです。

自分を客観的に見て考えられるヒントがたくさん出てくるので、自分と重ね合わせることで楽しく見られます。友だち、恋人、家族、会社の上司、後輩など人間関係を今より良くしたい、周りをどんどん巻き込みたいと思っている人は、ぜひともみなみのような素直な気持ちで見に行ってほしい作品です!

映画の“顧客”を満足させるエンタテインメント

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本作の総合プロデュースは、言わずと知れたヒットメーカーの秋元康氏。メガホンを撮った田中誠監督とともに、原作者の岩崎氏が脚本を担当した。本作のカギとなる「マネジメント」の理論は、劇中分かりやすいよう字幕で解説。観客は、みなみとともにドラッカーの至言を理解しながら、マーケティングやイノベーションといった理念や手法を用いて、みなみが弱小野球部をマネジメントしていくさまを見守ることができる。AKB48ファンの10代からドラッカーを学んだビジネスマン世代まで、幅広い年齢層の顧客を満足させる仕上がりとなっている。

前田敦子、瀬戸康史、峯岸みなみ…フレッシュなキャストの強みを発揮

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ヒロインのみなみを演じるのは「AKB48」のエース、前田敦子。映画初主演となる前田は、同作の挿入歌「Flower」でソロデビューも果たした。同じくAKBの峯岸みなみも出演。岩崎氏が峯岸を原作のモデルにしたことは広く知られているが、映画では前田演じるみなみのサポート役として、後輩のマネージャー北条綾乃を好演している。人気急上昇中の若手俳優・瀬戸康史が、大泉洋演じる加地監督に対し不満を抱える野球部のエース・浅野慶一郎に扮しピッチャーマウンドに立つ。キャストのみずみずしい魅力がスクリーンで存分に発揮されている。

青春映画としての真摯さ

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マネージャーが身につけていなければならない資質は、才能ではなく真摯(しんし)さだという一節に心打たれるみなみ。本来経営者に向けて書かれた「マネジメント」だが、営利を目的としない部活動に取り入れられることで、みなみの真摯さがよりクローズアップされる。マネジメント部分以外でも、野球部における監督と部員とのかかわり合いや友情、マネージャー業に打ち込む理由など、登場人物の人間関係がドラマチックに描かれており、青春映画としてのクオリティも高い。甲子園を目指す若者のひたむきさは、輝く夏の陽光とともに見る者の心を揺さぶるだろう。

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