劇場公開日 2010年11月27日

「丸見えピアノ線にみる、本作の意義と意欲」デスカッパ ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5丸見えピアノ線にみる、本作の意義と意欲

2011年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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幸せ

特殊メイクアーティストとして活躍する原口智生が監督を務め、「ウルトラマンメビウス」のヒロイン役で注目を浴びた平田弥里を主演に迎え描く、特撮コメディ映画。

TOKYO SHOCKシリーズ第三弾と銘打たれた本作。このシリーズ作品が一貫して提示してきたのは、「日本」という国が誇ってきた独自の文化、組織、技術をもう一度、見直してみるという視点である。

「片腕マシンガール」では女子高生と忍者、「東京残酷警察」では日本の警察組織と、任侠。そして本作「デスカッパ」で持ち出したのは、日本が世界に誇る円谷プロを始まりとする特撮怪獣映画だった。

円谷プロが生み出した世界的スーパーヒーロー「ウルトラマン」に用いられた極めてアナログ、かつ手作りの暖かさが伝わるミニチュア世界。今のCG全盛の時代にあって、この独特のチープ感が評価されるのは何故か。

本作では敢えて発泡スチロールで作ったような飛行機をピアノ線で吊るし、プラモデルを並べ立て、昭和当時の世界観を再現する。物語も現代のように二転三転の大スペクタクルを拒絶し、怪獣同士のビルを派手に破壊して、最後は光線でけりをつける「あの」感じを踏襲する。

そこには、昭和という未来に希望が満ち溢れ、発展のためがむしゃらに突き進めた時代を象徴するものが散りばめられる。プロレス、エースを狙え、松田聖子ばりのアイドル歌謡。全てが一丸となり「特撮」が席巻した時代に改めて光を当てていく。

もっと上に、もっと元気に生きていられたのは、あの頃。破天荒なカッパ対怪獣のプロレスに見えるのは、映画、テレビが本気で安っぽく、ヒーローを作り出していた意味と、それが出来たことの有難さなのかもしれない。

可憐なヒロイン、お子様にも十分に理解できるストーリー。そして、おぞましくも格好良いカッパ様。下手に複雑にしなくても、わくわくできる設定は、入り組んだ物語ばかりを高く評価してしまう観客への皮肉と挑発。そして、丸見えピアノ線を笑って許した昭和人への哀愁に思えてならない。馬鹿馬鹿しくも鋭い批評に満ちた、高い志が生んだ作品である。

ダックス奮闘{ふんとう}