劇場公開日 2011年12月10日

源氏物語 千年の謎 : インタビュー

2011年12月9日更新
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田中麗奈が向き合った、相反するふたつの境地

愛するがゆえの情念と、かなわぬ恋への諦観(ていかん)。「源氏物語 千年の謎」で田中麗奈が演じた六条御息所は、相反するふたつの境地をもって主人公の光源氏と向き合う。貴族としての気品あふれる立ち居振る舞いで魅了しつつ、生霊になってまで源氏への思いを募らせる激しい姿には風格すら漂う。デビュー以来、スクリーンに軸足を置いてきたが、着実に“大人の映画女優”としての地歩を築いている印象を受けた。(取材・文/鈴木元、写真/本城典子)

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六条御息所は元東宮妃という立場にありながら、年下の光源氏への愛にのめり込んでいく。源氏は果たして、それほどまでに魅力的な男性なのだろうか。これには、人生を狂わされる代表格ともいえる女性を演じた田中も当初は懐疑的だった。

「フワフワといろんな女性と恋愛をしていく姿は、素敵だという感じでは見られませんでした。愛を求めているようで、実は誰も愛していないんじゃないかなあと。容姿端麗で権力もあって、すべてを持っている男性というイメージがあったので、そういう方の恋愛に対しての向き合い方とはとても考えられず、それが永遠のプリンスとして平安時代に書かれていたことがとても意外でした」

そのプリンスをとことん愛し抜かなければならない役へのアプローチにはかなり悩み、苦労があったと推察する。そのあたりは、映画で「源氏物語」と並行して描かれる作者・紫式部の藤原道長に対する愛の強さからヒントを得たという。

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「式部は女性として、道長に愛されたいという思いがあったんでしょうね。でも、彼が欲しかったのは彼女の才能だけ。自身の権力をさらに絶対的なものにするために、彼女は利用されていたんですよね。彼女は感情に流されずコントロールできる強い女性ですけれど、どんどんたまっていくうみのようなもの、憎しみや嫉妬、プライドもずたずたにされて傷ついた心などが闇となって集まったのが、御息所の生霊の部分だと思うんです。だから御息所の視点だけではなく、式部がどのような感情でどういう状態なのか、どんな表情をするのかなどを自分で予測しながら当てはめていきましたね」

時代劇は「山桜」(2008)以来となるが、江戸時代の武士の妻と平安時代の貴族では趣が全く異なる。大きく寄与したのが、身分の高さを表す紫を基調とした衣装の数々だった。

「紫は彼女のイメージカラーで、権威がある女性しか着られない特別な色。そういうことを知っていくとキャラクターが見えてくるところもありました。着物を重ねて着てはかまをはくと一歩一歩が重くて、現代とは動き方も全く違いますし、歩くたびにシャーッという着物の音や重みを感じていました。逆に生霊になったときは、シルク素材の着物を素肌にはおると、肌になじんで自由にフワフワと飛べるような気がする。そういう感覚が気持ちを盛り立ててくれました」

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インタビュー2 ~田中麗奈が向き合った、相反するふたつの境地(2/2)
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