劇場公開日 2010年8月13日

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「アイドルと、怪奇」シロメ ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アイドルと、怪奇

2011年8月3日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

怖い

「ノロイ」などの作品で知られる白石晃士監督が、現在人気急上昇中のアイドルグループ「ももいろクローバー」を主演に迎えて描く、心霊ホラー作品。

竹内結子、北川景子などの人気俳優が所属しているスターダスト・プロモーションが配給を担当した作品が、奇抜な描写が注目を集める作り手のホラー映画。一見異質に映る取り合わせであるが、観賞してみるとその的確な狙いと、ホラーである必要性がひしひしと伝わってくる。

「瞬き」などスタンダードな作品作りに徹してきたスターダスト作品としては、もっとも意欲的な挑戦が光る作品である。

人気アイドル「ももいろクローバー」が、都市伝説として名の知られた「シロメさま」と言われる怪奇現象が発生した廃墟に乗り込む。お蔵入りしてしまった企画の番組を映画にしたという設定の作品だが、本作の作り手である白石監督がこれまでの作品でも貫いてきた「嘘だとすぐ分かるけど、何だか本当っぽい世界」が本作でも魅力を爆発させている。

胡散臭い霊媒師、怪談の語り手、気味の悪い廃校。まさに心霊ホラーの鉄板要素がこれでもかとぶち込まれた空間に寒気を感じながら物語に引き込まれた観客を見越したように、これまたこれでもかと披露される「ももいろクローバー」の人気曲の数々。下手にグラビア誌で「よろしくね、ふふっ」とありがちに微笑まれるよりも、暗闇で「いい加減にして!」と絶叫しながら涙を流した方がよっぽど心に刻まれる。

幽霊が「おい」と睨みつける一室で、歌って踊るアイドル6人。一番を歌い終わってから、狙い済まして暴れだす「シロメさま」の謙虚な姿勢に思わず苦笑、失笑。そうこうしているうちに、観客はいつの間にやら心霊の恐怖よりも陽気なアイドルソングばかり記憶に残る。これは、荒業。流石は天下のスターダスト・プロモーション。抜かりない新手の詐欺・・じゃなく、宣伝企画である。

いかに、上映当時無名のアイドルが歌う曲に観客を引き込むか。それが、今回の企画の狙いである。目を見張る奇怪現象を呼び水に、テレビ番組のバラエティ感覚で見せ切る自信と、技術。AKB48が主演した無味無臭ホラー「伝染歌」(07)と比較しても、恐怖心霊ものとしてきちんと体を成しているうえに低予算で大きな反響が帰ってくる、したたかな一本である。

とはいえ、そこはやはりホラーはホラー。薄気味悪い夜の絶叫世界は、真夏の納涼作品としてきちんと役割を果たしてくれるだろう。馬鹿馬鹿しくも興味が尽きない、アイドル映画の新しい趣向が光る。

ダックス奮闘{ふんとう}