劇場公開日 2011年2月11日

あしたのジョー : 映画評論・批評

2011年2月8日更新

2011年2月11日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー

たぎる肉体、躍動する肉体は映画ならではの愉しみ

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開巻劈頭(へきとう)、泪橋の向こうに広がる昭和のドヤ街を舐めながらキャメラがパンアップするや、寺山修司作詞の聞き慣れたアニメ主題歌が流れてくる。累計発行部数2000万部、しかも40年間も読み継がれてきた“誰もが知っている”傑作漫画の実写映画化だけに仕上がりを危惧していたが、なかなかどうして、矢吹丈(山下智久)や力石徹(伊勢谷友介)や丹下段平(香川照之)といった愛すべきキャラクターたちが見事に躍動していて、血湧き肉躍る傑作アクションになっている。

成功の要因その1は、ボクシングシーンの生々しさだ。特にジョー役の山下も、力石役の伊勢谷も極限まで肉体をそぎ落とし(体脂肪率は5%未満に)、「たぎる肉体」を見せつけてくれる。漫画にはない血しぶきや汗の体液的な感覚は映画ならでは、だ。

成功の要因その2は、「ピンポン」の曽利文彦監督によるCG演出の巧みさ。特に、ジョーの必殺技「クロスカウンターパンチ」の描写がいい。パンチを食らったボクサーの頬が超スローモーションでブルブルッと震える荒唐無稽さは映画史に残る。リアルさの追求というより、漫画のコマ割りが巨大なスクリーンに映し出される歓びを味わえる。

成功の要因その3は、キャラクター造型のうまさだ。山下はいつものドラマ同様に、ジョーのクールさを醸し出している。だが、ドラマ部分が面白く転がっているのは力石や段平といったサブキャラが立っているから。伊勢谷や香川の演技の賜物だろう。

この出来映えならば、後編も見たい。ジョーが真っ白くなるまでつき合ってみたい!

サトウムツオ

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